「学級担任は、体力を必要とする仕事なんです。子どもたちは担任に対し、指導のスキル以上に “年が近い”“元気”のような部分を求めるところもある。担任の魅力として『若さ』は要因の1つになります。若い先生の活躍の場を作っていきたかったのです」
もう1つ、内海氏の原動力となっている経験がある。主幹教諭時代、同僚だった若手教員が、転任直後に学級経営につまづき、心身のバランスを崩して退職した出来事だ。
「優しく、子どもたちにも好かれていた先生でした。でも支えきれなかった。力のある先生でも、追い込まれて続けられなくなってしまう現代の学級担任の困難さ。その状況に、学校の仕組みそのものの課題を感じたんです」
その教員は2校目で、「(2校目なのだから)一人である程度自立できるだろう」という学校文化があったという。成長を願って任せる側面もあった一方で、困難を抱えた時に周囲の支援につながりにくく、結果として1人で抱え込ませてしまった面もあった。内海氏は、この出来事を「システムエラーだった」と表現する。
「当時の管理職の先生方が、決して冷たいわけではありませんでした。ただ、教育の世界には、“失敗できない”空気があるとも感じています。大きな問題が起きれば評価や次のキャリアにも影響する。新しい挑戦よりも、“失点しないこと”が優先されやすくなっていたのではないかと思っています」
その結果、学校全体がリスクを避ける方向に傾き、困難を抱える教員を支えたり新しい挑戦を支えたりする動きが後回しになってしまう——。内海氏は、そうしたシステムそのものに課題意識を抱いている。
一方で、現実の副校長業務は、多忙を極める。教育委員会への報告、施設管理、来客・電話対応——。ICT支援員がいない時間帯には、「エクセルが動かない」などの相談が副校長へ集まる。内海氏は、副校長の時間が奪われる要因として、「全てを報告する文化」も挙げる。
「『副校長に報告しなければいけない』という意識があるので、とにかく口頭で伝えに来る。口頭でのやり取り自体はもちろん大切なのですが、それだけでかなり時間が取られてしまいます」
“なんでも副校長へ”を変える仕組みづくり
こうした状態を少しでも変えるため、内海氏は情報共有の仕組みそのものを見直し始めている。その1つが、Google Chatを活用した校内情報の可視化だ。
これまで同校では、付箋や口頭伝達による情報共有が当たり前だった。しかし現在は、欠席連絡の対応状況や来校者情報、教職員の所在などをチャット上で共有する運用への切り替えを進めている。
「朝の欠席連絡では、誰から電話があったか、誰がまだ登校していないかを、朝の連絡用Google Chatに書き込むようにしています。それが残ることで、自分たちを守ることにもなるんです」
ただし、トップダウンで導入を強制することはしない。
「『便利だから使ってください』では、なかなか広がらないんですよね。本当に困ったタイミングで、『これ便利だ』と実感してもらうことが大事だと思っています」
