もうひとつの特徴は、2000年代初頭のアメリカ産業では忌み嫌われるようになっていた「垂直統合」を導入したことだ。
従来の他の製造メーカーと同じく、航空宇宙企業は下請けの供給する部品からロケットを組み上げていた。マスクも当初は同じやり方を試みたが、この業界のサプライヤーが提示する価格の高さに苛立つようになる。そこで彼は、できるだけ自社内で生産することに決めたのだった。「自分たちで作らなければ、あの古い価格体系に縛られたままになる」と彼は後に説明している。
垂直統合型のものづくりは、最後の細部に至るまでロケットの作り方をより強くコントロールできる。「基本的には外注するより垂直統合のほうが効率的だと分かった」と彼は2005年の講演で語っている。サプライチェーン全体に対して、マスクの強いこだわりである単純化と最適化を適用することで効率化が実現されていた。
夜空を見上げれば、そこにマスクの人工衛星がある
こうした戦略によって力をつけたスペースXは、マスキズムが追い求めてきた「国家との共生」という意味でも、圧倒的な存在となった。スペースXは国家プロジェクトのためのグローバル・プラットフォームとなり、アメリカ国内の政府機関に対してだけでなく、世界中の政府機関に対しても「サービスとしての主権」を供給する企業となったのだ。
スペースXは当初から常に他国とのビジネスを模索していた。2003年の段階から、マレーシア政府向けに通信衛星を打ち上げる600万ドルの契約を交わしていたのがその一例だ。しかし、国家プロジェクトのためのグローバル・プラットフォームとしての真価は、マスクが2015年に発表した衛星インターネット・サービス、スターリンクの登場によって発揮されることになる。
衛星インターネット自体は何十年も前から存在していたが、通信速度が遅いという問題を抱えていた。スターリンクが革新的だったのは、衛星をこれまでよりも遥かに地球と近づけたことだった。従来の静止衛星は上空2万マイルを周回していた。しかしマスクはネットワーク帯域を増やすため、衛星を地上約400マイルの低軌道に配置することにした。
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