だが、それには落とし穴がある。遥かに多くの衛星が必要になるのだ。
2019年5月、スペースXのファルコン9ロケットがスターリンク衛星の軌道投入を開始した。その数は2025年の時点で8000基超に達し、稼働中の全衛星の3分の2を占めている。
いま夜空を見上げ、小さな光が動いているのが見えたなら、それはマスクの持つ衛星である可能性がかなり高い。わずか10年足らずで、彼は天を作り替えた。多くの人々が気づかないうちに、低軌道帯は、太陽電池翼を備えたドローンが蜂の巣のように飛び回り、レーザーで互いに通信し合う空間になったのである。アポロ宇宙船が宇宙時代第一期の象徴だとするなら、宇宙時代第二期の象徴は、スターリンクの「メガコンステレーション(巨大衛星群) 」を構成する、低高度で高速の衛星だ。
インターネットの拠点として君臨する「スターリンク」
スターリンクは2021年に商用サービスを開始し、当初は既存のブロードバンド・インフラが乏しい、あるいは存在しないアメリカ国内の地域に焦点を当てていた。だがすぐに世界中の政府と交渉を始めて規制上の認可を得ていくと、2025年の時点では100カ国以上で利用可能となっている。
スターリンクは政府請負業者にもなった。アメリカおよび他国の政府機関が衛星インターネットのサブスクリプション料金を支払っている。
もうひとつ、政府からの資金源としてスターリンクが狙ってきたのが、通信環境の不十分な地域にインターネットを通すための補助金である。2020年、トランプ政権下の連邦通信委員会は、農村部の世帯や企業にネット通信を配備する支援として、同社に約9億ドルを交付すると仮決定した。バイデン政権下の連邦通信委員会はこの割当を取り消したものの、第2次トランプ政権は別の連邦助成プログラムのルールを変更し、スターリンクへの資金の蛇口を開いた。
しかし最も重要なのは、スターリンクが現代の軍事行動にとって不可欠な存在になったことである。そのターニングポイントは、2022年のロシアによるウクライナ侵攻後に訪れた。スターリンクの携帯型受信機が、ウクライナ軍にとって戦場での通信や連携に欠かせない手段となったのだ。これが実績となり、アメリカ政府による追加投資を引き出した。
すでにアメリカ政府は2021年に、スペースXと18億ドルの契約を結んでいた。その目的は、暗号化通信、偵察のための電波・光学センシング、ミサイル早期探知のための赤外線センサー、地上の物体の位置特定・追跡といった追加機能を備えたスターリンクの軍事版「スターシールド」開発である。
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