特徴として最も際立っていたのは、生産に対するアプローチだった。伝統的な航空宇宙業界は、ゆっくりと慎重に動く。これに対してマスクは、素早く試行錯誤を繰り返すやり方を要求した。スペースX初期に彼と関わった航空宇宙業界の幹部数名によれば、「素早く作って、素早く学べ」というのがイーロンの哲学だった。失敗は避けるべきものではない。失敗こそ学びだった。「まだエンジンが爆発してないというのなら、十分に試行が足りてないってことだ」とマスクは後に、空軍士官学校の候補生たちに語っている。
また、マネージャーの数を最小限にすることで、エンジニアはその場で意思決定できる権限を持てた。また、こうした構造はマスクと社員の距離を縮めるものだった。マスクは、入り組んだ指揮命令系統を通すことで自身の支配が薄まるのを嫌がり、直接的に統治することを好んだ。オーナーであり最高経営責任者として自分が指揮を執る。エンジニアに一定の権限を委ねるとしても、絶対権力は自分にとどめる。会社の高次戦略だけを考えて過ごすことには満足せず、製品の作り方の細部まで指図することもよくあった。
大きいものであれ小さいものであれ、マスクはとにかく迅速に意思決定をくだした。ピーター・ティールが言うように、君主制は官僚制より速く動ける。アジャイル開発に基づいて組織された君主制は特に素早い。
ロケット界の「トヨタカローラ」
スペースX最初の製品は「ファルコン1」と名付けられたロケットだ。打ち上げコストの劇的な引き下げを実現することが目的だった。2000年代初頭、ロケットに衛星などを積んで軌道に投入する場合、550ポンド(約250キロ)で3000万ドルほどかかっていたが、マスクはファルコン1で、その倍以上――1400ポンド(約635キロ)――を700万ドルで運びたいと考えた。
実現すれば、小型衛星の打ち上げ市場独占という短期目標と同時に、人類を多惑星種にするという長期目標にも役立つ、と彼は語った。火星の植民は、宇宙に物を送るコストが今より遥かに下がらないと実現しない。ファルコン1はロケット界のトヨタ・カローラやホンダ・シビックになる、と彼は宣言した。安くて信頼できるロケットというわけだ。
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