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なぜ80代女性は「顔が浸からない風呂」で溺死したのか…遺族の疑問を解いた法医解剖医が語る"入浴中の事故死"の怖さ

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(写真:PIXTA)

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入浴中の事故死は年間約1万9000人と交通事故の7倍にのぼる。その多くを占める高齢者の死亡のなかには、一見すると説明がつかないケースもある。風呂で発見された80代女性は、顔が浸からない水位の浴槽でなぜ溺死したのか。
書籍『法医学教授が教えている 死体の授業』より一部抜粋し、法医解剖医が死体検案で見抜いた驚きの真相と、日本が抱える解剖制度の歪みを明かす。

「風呂で死ぬ」

日本の入浴関連の事故死は推定年間1万9000人。

これは交通事故で亡くなる人の約7倍にも上ります。風呂で死ぬ人のほうが多いということ。そして入浴関連の事故死でとくに多いのが65歳以上の高齢者です。

私が死体検案をした80代の独居女性もその1人でした。しかし、入浴関連事故死にしては不可解な点が多すぎたのです。

「1人暮らしの母がお風呂で死んでいた。だが、亡くなった原因が溺死のようで溺死でないかもしれない」

私が解剖を担当する鳥取県では、警察が取り扱う死体は年間約1000体あり、そのうちの実に約100体、つまり10分の1が入浴中の死亡事故によるものです。県内の交通事故による死亡が年間17、18件しかないことを考えると、圧倒的に「道路よりも自宅の風呂のほうが命の危険がある」のが現実です。

自宅の浴室で遺体となって発見された80代女性もその1人でした。発見者は近所に住む女性の娘さんで「病院の日だから迎えに来た」ところ、全裸で湯船に浸かったまま死んでいる母親を発見。当初の死因はよくある溺死かと思われましたが、溺死にしては不思議な点があったため、私のもとへ運び込まれてきたのです。

発見時、女性は浴槽内で湯船に浸かったままの状態でした。お湯の設定温度は43℃が保たれており、状況を整理すると女性は死後2日間、全裸で43℃の湯船に浸かっていたと考えられます。

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