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なぜ80代女性は「顔が浸からない風呂」で溺死したのか…遺族の疑問を解いた法医解剖医が語る"入浴中の事故死"の怖さ

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(写真:PIXTA)
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さて、死因は明らかになりましたが、溺死にいたった理由はこの時点では不明です。発見した家族によると「顔はまったく湯船に浸かっていなかった」そうですが、その証言が正しいことはCT診断でも明らかになりました。つまり、死後に体勢を崩して湯船に顔を沈めたわけでもない。

では、なにを疑うべきか?

女性が亡くなった浴室を含めた自宅の状況、そして発見されるまでに2日間の時間があったことを加味した結果、私としては「溺死したあとに湯船の水位が下がった」との見解に行き着きました。

80代女性が長年暮らしていた自宅は、家屋同様に浴室の設備も古いものだったそうです。発見されるまでの2日間に、お湯の温度は保たれたまま、けれども浴槽の底にある栓から少量ずつお湯が流れ出していたのだと考えられます。お湯ですから、蒸発によっても少しずつ失われていくでしょう。

「熱い」と意識しても体の動きが追いつかないことも

流れ出る量はごくわずかずつでも、48時間が経てば水位は徐々に下がります。発見時に水面が顔より5cmほど下の位置だったのは、そのためだと推測できます。おそらく、死亡直後に発見されていれば、顔が湯船に浸かった状態のままで死因の特定はたやすかったでしょう。

若者であれば入浴中に熱中症でクラッとした症状が現れても、すぐに「熱い」と判断してお風呂から上がることができます。けれども、高齢者は「熱い」と意識しても体の動きが意識に追いつかないことが多々あります。

以上の見解を私から警察に口頭で伝え、遺族には警察から説明してもらいました。納得してもらえたかどうかまではわかりませんが、筋がとおっていることは理解していただけたのではないでしょうか。

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