現在、和布刈神社のスタッフは12人にまで増えた。当初、高瀨さんの父親は正月と神事のみ表に出て、日常的に働くのは高瀨さんひとり。人手が足りなくなるとアルバイト、さらに2019年からは正社員を採用してきた。採用方針も他とはひと味違う。
「神主ありきではなく、そのときどきに必要なスキルを持つ人を迎えて、神主の資格はあとで取ってもらえばいいと考えています」
前職はゲーム会社や飲食店のエリアマネジャー、県庁職員、外資の人事系など、多様な人が集まっている。「神社の家系ではない人が集まり、神社の仕事に誇りを持って働いてくれるのがうれしい」と語る。
2026年3月には、日本経済新聞社によるスタートアップのピッチコンテスト「NIKKEI THE PITCH GROWTH 2025-2026」で、準グランプリとストライク賞をダブル受賞した。約400社の中での快挙だ。
「神社が直面している課題を世の中の人たちに知ってほしかったんです。神社は異次元の存在のように見られがちですが、消滅の危機があることを一般的なビジネスの文脈で伝えることに意義があると考えました。評価いただいたのは素直にうれしく、ここがスタートだと思っています」
人は目に見えない力に祈りたくなることがある
今後については「自分の子どもたちに継いでほしいと言っていません。子どもたちにはそれぞれの目標を達成するための経験をたくさんしてほしいと話しています」。重要なのは血縁ではなく、「神社を良い状態で次の世代に引き継いでいくこと」と高瀨さんは言い切る。
「どんなに科学やAIが発展しても、人は目に見えない力に祈りたくなることがあるでしょう。心の拠りどころとなる神社は、この先も人々にとって必要だと信じています」
そう語る高瀨さんにとって、神社は単に過去からの遺産ではなく、人の暮らしに機能するために更新し続けるものである。長い歴史を背負いながらも、その意味を問い直し軽やかに常識を超えていく営みは、これからも静かに続いていくだろう。
