通信会社がなぜ電池事業に挑むのか。記者から「自ら持つ理由がよくわからない」「メーカーになるのはリスクではないか」と問われた宮川社長の回答に、新中計の狙いが透けて見えた。
宮川社長の描く長期構想
短期の議論をしているのではないと宮川社長は強調した。10年20年の単位で考え、国産バッテリーと国産材料で作れる電池の製造体制ができれば、日本のエネルギー安全保障のモデルになる。さらに輸出できる能力にまで高まれば、外貨を稼げる会社へと変わる、という構想だ。
通信事業を中心としたソフトバンクは典型的な内需企業である。人口減少が進むなかで通信事業の成長余地は限られる。「内需の会社はそれ以上伸ばそうとすると、お客さんにしわ寄せがいってしまう」と宮川社長は語った。AI時代を支える電力インフラを国産化することで、輸出産業に転換する。それが宮川社長の描く長期構想だ。
大阪堺の構想自体が、この「産業集積地」の発想に基づく。データセンターが占めるのは敷地全体の8分の1ほどで、残るスペースでGXファクトリーが電池や次世代太陽光パネルを製造する。日本の海岸沿いに錆びついた工業団地が点在する現状を踏まえ、AIの頭脳の周りにAIを使った新しい産業を集積させ、日本のビジネスモデルにしたいと宮川社長は語った。
量産スケジュールは2027年度に100メガワット時規模で立ち上げ、その後段階的に拡張する計画だ。新中計の最終年度にあたる2031年3月期には連結営業利益1兆7000億円、親会社の所有者に帰属する純利益7000億円の達成を目指している。AIインフラ事業の収益化が前提となるなか、電池事業はその一翼を担う構成要素となる。
通信会社が電池メーカーになる挑戦は、リスクと隣り合わせだ。2027年度のセル製造開始、2028年度のギガワット時規模の量産という目標を達成できるか。自社内需要にとどまらず外販で収益化できるか。この2点が、ソフトバンクが描く社会インフラ企業への変身を左右する。
