百聞は一見にしかず、この写真は印象的な重要資料となり、袴田事件への社会の関心を呼び、公正な裁判を求める強い声が起きました。
前川彰司さんが服役した福井女子中学生殺害冤罪でも、ゴビンダ・プラサド・マイナリさんの東京電力女性社員殺害冤罪でも、再審請求手続きになってから、有罪に疑問が生じる重要証拠が検察から開示されました。そうした検察にとっての「不都合な真実」の公表を禁じ、違反すれば罰する。それが「開示証拠の目的外使用禁止」です。
ブラックボックス化の懸念
開示証拠の目的外使用禁止がなぜ今、再審制度改定案の中に盛り込まれたのか。
そもそも再審制度の改定は、袴田事件をはじめ無実の訴えを受けた再審請求の手続きに年月が掛かりすぎることなどを踏まえた対応…のはずですが、この目的外使用禁止のほか、検察の証拠開示にも制限を設けました。
再審開始までに年月がかかる原因と悪名高かった「検察官による再審開始決定への抗告」は原則禁止になったものの、実は法制審の当初案では検察官の抗告には手をつけず温存していました。法制審はいったい何のために改正案を作ろうとしていたのでしょうか。
案をまとめた法制審の部会メンバーには法学者もいますが、再審法改革に後ろ向きな姿勢の人を選んでいるという批判も出ました。
改定案をまとめた法制審の部会では、目的外使用を禁止する理由に「名誉・プライバシー」を挙げています。確かに裁判の証拠の一部には、関係者が公表を望まないものがあっても不思議ではありません。
ただ袴田事件の衣類をはじめ、そうでないものはいくらでもあります。なのに何もかも公表禁止…目的はいったい何なのでしょうか。それに、裁判はそもそもトラブルを扱うもの。知られたくない事実が討論されることは前提です。
そのうえでなお、秘密裁判や秘密処罰の危険はあまりにも重大だから、公開を一律義務にしているわけです。それをまげて「差し障りがないもののみ公開」にすれば、公開は名ばかりになるでしょう。
実際には、著しくセンシティブなものに関してのみ個別に取り扱い方を申し合わせることも十分可能です。開示証拠を全面公表禁止とする現在の案はまるで筋が通りません。検察の「不都合な真実」を私たち市民が知るのを防ぐのが真の狙いだからこうしていると言われても仕方ないのではないでしょうか。
再審手続きがブラックボックス化すれば、民主主義社会の主人公であり運営者であるはずの市民は自ら考えて納得することができません。疑念が広がり、「公表されない証拠とは実は…」などの陰謀論がはびこり、司法の信頼度は下がります。
公開、透明な司法は私たち市民の監視や検証を受け入れることで、堂々と公正さを示せます。ブラックボックスと公開・透明な司法のどちらを選ぶのか、その岐路に私たちは立っています。
