「AIの進歩もあって、私ではもう導いていけない。これでは従業員がかわいそうだ」
山口県宇部市の金崎浩税理士事務所を率いる金崎浩所長は、事務所を引き継ぐことにした経緯をこう語った。
税務署に約15年勤務した金崎所長が2002年に開業。複数の先輩税理士から事業を承継したこともあり、顧客は増え、宇部市内でも有数の事務所へと成長した。
「アナログの世界」
60歳を超えた頃から、引退を意識し始めた。「そういうタイミングがあると覚悟はしていたが、生成AIが出てきて、環境の変化が現実に迫ってきた」。かつては税理士事務所では税務や会計の勉強が主軸だったが、今やITの知識は欠かせない。日々の業務をこなしながらキャッチアップするのは並大抵のことではない。
パートを含めて従業員は約10人。50、60代が中心の組織だ。金崎所長は自らの事務所を「アナログの世界」と表現する。紙が多く、これまでの仕事のやり方が染みついている。地方では若手の採用が難しく、デジタル化を進める機運も醸成しづらい。必要性は感じていたものの、きっかけをつかめずにいた。
クライアントからのデジタル化ニーズは強まるばかりだ。しかし対応できず「お客さんが求めているものとずれが起きている」。事務所として新しいツールへの対応が進まないことに葛藤も深まっていた。
デジタルの進歩についていけないという焦りは日に日に強まり、吉田拓郎の名曲「古い船をいま動かせるのは古い水夫じゃないだろう」というフレーズが頭から離れなくなっていた。
意を決した金崎所長は数年前、デジタル専門特化型のsankyodo税理士法人(東京都港区)の勉強会に参加した。東京で最先端の税理士法人が推進するDXの水準に驚愕した。「自分にはないスペックをもっている」。もはや自分では到達できない地点まで、DXは進められていた。そして今年6月、同税理士法人のグループへの参画を決断した。
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【税理士事務所のM&Aが急増】
