台湾有事も同様だ。「習近平は独裁者だから、いつ侵攻してもおかしくない」という単純化された見方は、第三者の思い込みにすぎない。
自分が習近平国家主席になったつもりで考えてみれば、台湾の地形、自国軍の損害、米国や国際社会の反応、国内世論への影響など、考慮すべき要素が山ほどあり、そのハードルの高さに気づくはずだ。
現在の日中関係についても同様のことが言える。
中国が日本をどうみているか、どのような対応をとりうるのかを中国側の視点でシミュレートしてみると、外交・経済・軍事のいずれでも、中国のほうが日本よりはるかに多くの手段をもっているという現実が浮かび上がってくる。
⑦ 自分自身の「認知バイアス」に打ち勝つ
最後に最も重要なのが、「認知バイアス」を自覚することだ。
人は誰しも、アンカリング効果(最初の情報やデータに判断が引っ張られる)やステレオタイプ(所属集団への固定観念で判断する)など、数多くのバイアスから逃れることはできない。こうしたバイアスは、気づかないうちに適切な判断を妨げてしまう。
もちろん、認知バイアスを完全に排除することは不可能だ。
しかし、判断のたびに、「自分は、バイアスに影響されていないか」を意識的に問いかけるだけで、分析の精度は大きく高まる。
インテリジェンス・リテラシーは自分自身と社会を守る
世界はこれからも混乱し、情報はさらに溢れかえる。
だからこそ、情報の発信源はどこか、その特性や偏りは何か、同じ情報を他はどう伝えているか、背景情報を踏まえるとどうみえるか——こうした問いを重ねることが、インテリジェンス・リテラシーを高め、自分自身の生活やビジネス、社会全体をよりよい方向に導く基盤となる。
拙著『海外経験ゼロの私に、世界と経済をイチから教えてください!』で触れた通り、情勢の把握は大局を捉える程度でも構わない。むしろ、すべてを理解したような気になることのほうが危険である。それこそまさに「認知バイアス」に他ならない。
本稿にて紹介した7つのポイントを意識して情報に向き合えば、情勢の捉え方は確実に変わる。
複雑な状況に向き合う際の指針として積極的に活用してほしい。
