医師をはじめとする医療スタッフとの意思疎通が十分図れないという訴えも多い。
特に、初期で、知識に乏しく、病院に慣れていない状況では医師の言葉も難しく、治療方針を説明されても理解できない。「がんに罹ってしまった」という重い事実のため、冷静にもなれず、考える力も湧いてこない。
命に関わる重大な事態を、自分で掌握できないという感覚も時に大きな悩みになってしまう。
これまで、自分自身でコントロールしてきた日々の行動が、自分を離れ、医療スタッフの指示通りにせねばならないという点についても、違和感が強い。がんが悪化し、自覚症状が強くなっていくようなときは、医療スタッフに信頼を寄せることが難しい局面が生じることもある。
■身体の苦痛
「身体の苦痛」は、がんによるさまざまな症状や治療に伴う副作用・合併症・後遺症がその代表である。
手術に伴う合併症には、出血や感染症などを含むさまざまな病状がある。薬物療法による副作用も、すべてを合わせれば数十種類以上にのぼる。また、手術後に生じる傷の痛みやリンパ浮腫(ふしゅ)、食欲不振や排便の異常などは、患者を悩ませることが多い後遺症である。
患者が抱える「心の苦悩」
■心の苦悩
「心の苦悩」には、不安や恐怖など「感情の悩み」、うつ状態や孤独感などの「気分の落ち込み」、生き方や生きがいについての「魂の痛み(スピリチュアルな苦痛)」などが含まれる。
がんの診断直後には、「この先どうなるのだろう」という不安に襲われ、恐怖のあまり、死を身近に感じる。また、治療終了後、経過観察期に入れば再発や転移への不安を覚える。
手術のような負担の大きな治療を終え、外見的には健康を取り戻しているように見える時期でも、患者本人は、本調子ではないと自信を持てず、再発への不安もあって、孤独感にさいなまれることがある。
あるいは、再発が明らかになり、将来を悲観することもある。そういうさまざまな負の感情が要因となって、うつ状態に陥ることもまれではない。
一方、「魂の痛み」という場合の「魂」は、患者の「自分らしさ」や「プライド」に似た概念である。それが傷つけられ、「これまでの生き方とは違い、自分らしさが失われてしまった」という悩みである。「アイデンティティの喪失」と言うこともできる。
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【「魂の痛み」とはどういうものか】
