5月12日、フジ・メディア・ホールディングス(FMH)が新たなグループビジョンを発表した。元タレント・中居正広氏をめぐる問題に端を発したガバナンス危機、広告収入の激減、2026年3月期の営業赤字87億円——。それらを受けて、フジテレビはどう変わろうとしているのか。
ビジョンの柱は明快だ。IP(知的財産)を開発して制作したコンテンツを、多角的に展開していくことである。5年間で1500億円をIP事業に投資し、『踊る大捜査線』『コンフィデンスマンJP』『PSYCHO-PASS』などの既存IPをフランチャイズ化して、グローバル展開を目指すとしている。
ビジョンの中で示された意欲的な姿勢
特筆すべきは、フジテレビの放送設備やスタジオを持ち株会社であるFMHに移管し、フジテレビはコンテンツ事業に特化する今後の姿を示したことだ。
放送インフラの持ち株会社への移管と聞くと、00年代に総務省の「通信・放送の在り方に関する懇談会」(いわゆる竹中懇談会)で激論になった「ハード・ソフト分離」を思い浮かべる人もいるだろう。だが今回の施策は、それとは本質的に異なる。グループ内での機能再配置であり、別々の事業者にハードとソフトを分離して伝送路を外部に開放するわけではない。
フジテレビ単体だけだと形式的な再配置にしか見えないが、FMH傘下にはBSフジがあり、仙台放送のようなローカル局もある。持ち株会社が複数局の放送インフラを集約して持てば、マスター設備(主調整室)を一元管理し、クラウド化・共同運用する道が開けるかもしれない。
マスター設備は10~15年ごとに更新が必要で、1局当たり数億円から十数億円の投資がかかる。広告収入が減少する中、地方局にとってこの負担は年々重くなっている。
総務省も24年にマスターのクラウド化を促す方針を打ち出し、系列単位での集約が最も効率的だという議論が進んでいる。FMHが先行して「受け皿」をHDに作っておくのは、この流れの先手を打つビジョンと見ることができる。そして、フジテレビのコンテンツ専業化が本気だとも受け止められる。
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【一方で「気になる点」も…】
