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不動産事業売却でコンテンツに1500億円投資、"甘えの元"に別れ告げたフジテレビがそれでも断ち切れない「80年代の呪縛」

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フジテレビ本社
闇夜に輝くフジテレビ本社。IPへの巨額投資で再び輝ける日はやってくるのか(写真:ブルームバーグ)
  • 境 治 メディアコンサルタント
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一方で気になるのは、グループの不動産事業だ。

ビジョンの目玉である5年間のIP投資1500億円を、現在の放送事業の収益力で賄うのは難しいだろう。26年3月期にボロボロになったのがやっと元どおりになるかどうかの状況では、番組制作以上のコンテンツ投資は無理だ。

では、投資資金はどこから出てくるのか。その答えが「不動産事業の売却益」のようだ。FMHは現在、傘下のサンケイビルを中心とする不動産事業の外部売却を進めており、外資系ファンドや大手不動産、総合商社など、20社超が買収に名乗りを上げていると報じられた。

この売却は、FMHが自発的に決断したものではない。旧村上ファンド系のレノや村上世彰氏の長女・野村絢氏らは、25年にFMH株を急速に買い増し、17%超の筆頭株主に躍り出た。その要求は「本業ではない不動産事業を切り離せ」というものだった。

FMHは買収防衛策を導入しつつも、最終的には不動産事業の売却に舵を切った。不動産を売却するからこそ、1500億円のIP投資を堂々と掲げられる。同規模の投資は昨年発表したアクションプランにも書かれていたことで既定路線ではあるが、ファンド側に迫られていよいよコンテンツに賭ける覚悟を決めたようにも映る。

放送事業が大きく毀損した状況で、安定的な収益柱である不動産事業を売却することを不安視する向きもあるかもしれない。だが、「もうやるしかない」状況を自ら生み出す決断をしたと捉えると、潔い判断だと考える。

大いに落胆した「新しい企業理念」

このように、グループビジョンは評価できるものだった。だが、同じ日にフジテレビが発表した「新しい企業理念」には大いに落胆した。

発表された理念は3層構造だ。「Corporate Question」として「その楽しさは、何のためにある?」。次に「Corporate Policy」として「楽しさを、はき違えるな」。そして「Corporate Story」として「ひとりの好きからはじまる熱を、世界中へあふれさせていく。」と掲げている。

いきなり「何のためにある?」と自問自答から始まっていることに、ひっくり返りそうになった。「そんなこと、自分で考えろ」と言いたくなる。そして結局、「楽しい」を軸にして、その解釈の問題に終始している。

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【「楽しくなければテレビじゃない」の呪縛】

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