結婚してから10年で5回の引っ越し。一生住むつもりで買った2軒目の事故物件も、やむを得ない事情で結局は手放した。今は「売る前提」で価値の下がりにくい家を買い、夫の体調に合わせて病院の近くへ、介護ベッドが必要になったらもう少し広い部屋へと、暮らしの変化に合わせて次の場所へ移れるようにしている。
「引っ越しを繰り返すうちに、軽やかに引っ越すのはありだなと思うようになりました」
引っ越すたびにモノや広さへの執着を手放してきたことが、「定住しなければならない」という思い込みからも自由にしてくれたのだろう。
持たないけど、持つ暮らし
現在、大木奈さんはミニマリストを名乗っている。85m²から25m²へ、10年かけて住まいを縮小してきた。けれどこの25m²の部屋は、いわゆるミニマリストの住まいとはだいぶ様子が違う。
かつてはモノを減らすことに囚われていたが、今は「余白を確保しつつ、日々の暮らしに支障をきたさないだけの分量だけをもつ」生活をしているという。壁と棚にはレトロな缶や懐かしい絵本キャラクターのフィギュアが並ぶ。20年ほど前に登場し、話題となったペット型ロボットもある。好きなものが、限られた空間のなかできちんと居場所を与えられているのだ。
「今までモノを増やさないようにって感じだったんですけど、今はおおらかに増やしてます。自分を楽しませることに重きを置いているのかな、と」
大木奈さんはその状況を「部屋が狭く持ち物が厳選されるからこそ“好き”の純度が上がる」と表現する。一度徹底的にモノを削ぎ落としたからこそ、今手元に残っているもの、新たに迎え入れたものには理由がある。そこにあるのは、広さや便利さだけでは測りきれない、心のうるおいだ。
