今、赤ちゃんの身体が以前とは変わってきているのではないか――そんな現場の専門職たちの「変化の実感」に迫った調査がある。2023~25年度の文科省科研費で実施された「コロナ禍を含む近年の乳児発達の『おかしさ』実態調査:問題の所在と機序の探索的研究」だ。
全国629名の専門職を対象としたこの調査回答から、いったいどのような“赤ちゃんの実態”や課題が見えてきたのか。研究チーム代表を務める東京学芸大学研究員・臨床心理士の武田信子氏に聞いた。
乳児に接する専門職の「違和感」とは?
――今回の調査のきっかけは、Facebookグループ「だっことおんぶを語る会」でのやり取りだったそうですね。
14年から8年間にわたり運営していたこのグループは、乳児に接する専門職と一般の親御さんが集まり、議論を重ねてきた場所です。
あるとき、メンバーの方が、膝を曲げず両足を伸ばして座る赤ちゃんの写真を見せてくれました。本来、乳児は腰椎から骨盤がしなやかに動くことで座位のバランスを取るのですが、その子は背中から腰の筋肉が緊張して硬くなっているため、柔らかい股関節を無理に開いて両足をベタッと床につけることで、なんとかバランスを取っていると考えられました。
「この座り方は大丈夫なのか」という問題提起を皮切りに、ベテランの子育て支援者たちの間で「最近の乳児の発達や育児行動に、これまでにない違和感がある」という声が次々と上がり始めたのです。例えば、首・肩・背中の筋緊張の強さ、体幹屈曲の可動性の減少、口腔機能の低下、運動発達の未熟化などはよく指摘されました。
次ページが続きます:
【専門職たちの「実感の分布」を可視化】
