――今回の調査結果を踏まえて、今後どのような取り組みが必要になるとお考えですか。
今回の調査はあくまで専門職の「実感」の分布を調べたものです。今後は、この実感を「実態」として科学的に検証し、具体的な予防の「実践」へとつなげていく必要があります。
ただ、私が最も強く申し上げたいのは、この結果を受けて「赤ちゃんの身体を部分的に矯正しよう」とか「より良く発達『させる』ための英才教育をしよう」といった世論が形成されることを望んでいるわけではない、ということです。
「社会的マルトリートメント」を防ぐために
――では、何が重要なのでしょうか。
一言で言えば、「社会的条件の改善」です。赤ちゃんの身体は、親との関わり、睡眠や生活環境、そして社会全体との相互作用の中で育まれていきます。誰かが意図的に傷つけるのではなくても、社会の価値観や習慣、あるいは制度の不備によって、結果として子どもの発達やウェルビーイングが損なわれてしまうことを、私は「社会的マルトリートメント(不適切な養育)」と呼んでいます。現代の日本では、出生前からすでにこの状況が生じている可能性があるのです。
――現状を打破するには、どうすればよいのでしょうか。
赤ちゃんの発達に少し気になるところがあっても、それを「正しく直す」のではなく、親子が何に困っているかに寄り添い、生活の中での自然な発達をみんなでゆったりと見守ることが大切です。
社会の中で最も小さな存在である乳児の人権は、ともすれば母親のケアや利便性の陰に隠れて、意識されにくくなります。しかし、乳児の発達の課題が多くの人の共通認識となり、赤ちゃんの身体に緊張を強いないですむ抱っこの仕方など、適切な生活上の対応を親に伝える仕組みが整えば、改善できることは多いはずです。
多くの人の手を煩わせ、多くの人から声をかけられ、気にかけられる生活。そうした多様な専門職や地域住民が「寄ってたかって子育てする社会」を実現させることが、子どもたちのウェルビーイングにつながる道だと信じています。



