窓の外にバックホウが見える。だが操縦席は無人だ。プレハブの室内に並んだモニター3台とジョイスティック2本だけで、20トン級の油圧ショベルが土を掘り、旋回し、また掘る。東京都内の道路工事の現場で、巴山建設がICT建機の遠隔操作による土工事施工を始めた。
巴山建設は東京都調布市に本社を置く中堅の建設会社だ。1950年の創業以来、多摩地区を拠点に土木工事を手がけてきた。
遠隔操作の装置自体は以前から存在する。雲仙普賢岳の砂防工事が有名で、80年代から使われてきた。だが今回の取り組みは、既存のICT建機に後付けの遠隔装置を取り付け、公共工事の実施工に投入したという点で前例がない。
ICT建機と遠隔操作を「後付け」で融合
ICT建機とは、衛星測位でバケットの刃先の座標をリアルタイムに把握し、3Dの設計図面に沿って掘削を制御できる重機のことだ。通常、油圧ショベルのオペレーターが所定の深さに正確に掘れるようになるには10年以上の経験が必要とされる。ICT建機なら画面上のガイダンスに従って操作するだけで、経験の浅いオペレーターでも図面通りの施工ができる。
この建機に、筑波大学発スタートアップのOEDO Dynamicsが開発した後付けの遠隔装置を搭載した。ベースとなるのはコマツの油圧ショベルで、既存の建機をそのまま使えるため、遠隔対応の新車を丸ごと購入するより初期投資はかなり抑えられる。
後付けの遠隔装置は他社も開発しているが、多くはレバーにモーターを取り付けて物理的に動かす方式だ。振動でネジが緩みやすく、1年以内に故障するケースもある。追加バッテリーも必要で、運転席が狭くなる。
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【遠隔操作のための通信回線は何を使っている?】
