小さな駅を出るとすぐに、昭和っぽい佇まいの婦人服店と文具店がある。角のケーキ屋さんのウインドウをのぞくと、生クリームではなくバタークリームのケーキが売られていた。今の若い人はバタークリームのケーキを知らないだろうが、40代の私ですら、たぶん最後に食べたのは幼稚園児のときだ。
札幌よりぜんぜん田舎な西谷
小道から商店街に出ると、個人商店の布団屋さんや本屋さん、花屋さんや靴屋さんが並ぶ。お客さんが入っているのを見たことがなく、どうして経営が成り立っているのか不思議だった。さびれて見えるのに、歩いている人は意外と多い。
私が育った街は札幌のニュータウンで、近所に個人商店はなく、子どもの頃から遠足のお菓子も漫画雑誌もコンビニで購入していた。最寄り駅には小さいながらも一応、駅ビルがあった。
だから西谷に来たときは「地元よりぜんぜん田舎じゃん!」と思った。でも、それが嫌だったわけではない。むしろ、はじめて目にする商店街やレトロな街並みにウキウキした。私は地元が嫌で出てきたので、「ここには私を知る人がいない」と思うと、とても気が楽だった。
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【気分の波が激しかった娘のことを父は内心どう思っていたのだろう?】
