その約20年後、ナイキにも似た構図のブームが訪れる。コアなスニーカーファン向けのバスケットシューズだったナイキ・ダンクスを、一般消費者向けに低価格で販売し始めたのである。
2020年以降、通称「パンダ(PandaDunks)」と呼ばれる白と黒の2トーンカラーは、特にアメリカで社会現象的なブームを巻き起こした。バーバリー同様、売上も株価も伸び、2021年の秋には株価が史上最高値を記録した。
ところが、20年の時差はあるものの、両社がたどった結果は驚くほど似ていた。どちらも、最も重要な存在であるコアファンの信頼を失ったのである。
バーバリーは「自己表現に積極的な若者向け」というイメージで語られるようになり、上流階級や都市部の富裕層からの支持を失った。イギリスのパブではバーバリーのスカーフを着用した客の入店を拒否する店まで現れた。
ナイキの場合も、過度な大衆化によってブランドの核心が揺らぎ、2021年に最高値をつけた株価はわずか1年で半分以下に暴落した。「ナイキをダサくした男」とBloombergが報じ、CEOのジョン・ドナホー氏は2024年秋に退任へと追い込まれた。
ブランドは、一時的な人気ではなく、長期的な信頼によって築かれる。人気はマーケティングや広告でつくり出すことができても、信頼は時間をかけて積み重ねるしかない。短期的な指標に引きずられると、ブランドの軸は簡単にぶれてしまう。
「ブランド=人気」という考え方は、非常に危険な誤解である。
「アテンション」ではない
「アテンション・エコノミー」という言葉が、近年のマーケティングやビジネスの文脈で頻繁に登場するようになった。ティックトック(TikTok)やユーチューブ(YouTube)のショート動画、X(旧Twitter)の拡散文化、インフルエンサーによるバズ投稿。こうした“注意の奪い合い”が、現代の情報環境を支配しているように見える。
確かに、ブランドも最初の接点をつくるにはアテンション(注目)を必要とする。人の記憶に残るには、まず目に留まらなければ始まらない。だが、それを目的化し、ブランドをアテンションの総量で測ろうとするのは大きな誤りである。
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【話題性と炎上は紙一重】
