住宅ローンや光熱費などは大介さんの銀行口座から引き落とされていて、クレジットカードも預けてくれている。現金での支払いは文香さんの稼ぎから。それで2人とも不満はない。
「彼はクレジットカードの支払い明細を毎月チェックして、『この買い物は何?』と聞いてきます。もちろん、私の洋服代などは自分で払っていますよ。娘の成人式の着物や自動車教習所の費用を出すことも親としての最後の役割だと思っています」
大介さんは文香さんを信用していないのではなく、物事を正確に把握して適切に対処しなければ気が済まない性分なのだろう。奥手なくせに細かいところが結婚を遅らせた要因かもしれないが、結婚も子育ての経験もある文香さんは鷹揚に受けとめている。
自身も含め、パーフェクトな人なんていない
「私自身も含めて、パーフェクトな人はいません。前の夫のようにゆるい人はゆるい人なりの困ったことを起こしますし、今の夫のように細かい人もそれは同じです。誰と結婚しても大変なことはある。それが私の学びです」
35歳以上での結婚とその生活を聞き取る本連載を総括するようなコメントだ。しかし、大変なことはあると言いながらも文香さんが笑っているのは、大介さんとの暮らしに安心と感謝を感じているからだと筆者は思う。辛いときにはここまで客観的になれないものだ。
北海道出身の大介さんも勤務先まで車で30分の自宅を愛しており、仕事が終わると真っすぐに帰宅。文香さんとの晩酌を楽しんでいる。
「『オレはこの家とともに死ぬ!』なんて宣言しています。たぶん、私もそうなると思います。千葉に骨をうずめることになるでしょう」
文香さんは生まれ育った千葉県の自治体から離れて生活したことがほとんどない。以前の結婚生活も音楽活動も含めて、車で30分圏内で人生が完結しているようだ。大人としての責任を果たしつつ、自分なりの幸せをつかもうと主体的に行動する人にとっては、狭い範囲でもさまざまなドラマがある。
