「生徒会と委員会の大人など各20人ほどが1対1で対話したら、予想以上に生徒たちがどんどん本音を話してくれることにみんなで大変感動しました」。そこで、やり方をアレンジして「トーク・フォークダンス」と名付け、翌年から2年生全員と地域の大人で年1回実践するようになった。
日本の子どもの自己肯定感が低いのは…
「最初にルールを伝えて、生徒たちが『何を話しても大丈夫』という空気を作ることが重要」と山口さん。
「日本の子どもの自己肯定感が低いのは、常に競争にさらされ、大人に評価されるからではないでしょうか。加えて、大人は子どもにカッコ悪いところを見せず、学校に立派な大人が講演に来て『夢は叶う』なんて言われてばかりだと『夢が叶わない人生は失敗なのかな……』と不安になるようです。
トーク・フォークダンスはそんな大人の上から目線をすべてなくし、大人がハマっているものや失敗談を一生懸命話すことで、生徒は『大人もゲームが好きなんだ』『大人も失敗するのか』と心がほぐれて、自分も本音を語り出します。すると目の前の大人がしっかり聞いてくれるので、とても楽しくなる。そして、まちで出会ったとき『この前はどうも』と自然と声を掛け合う関係が生まれています」
トーク・フォークダンスの効果を実感した山口さんは、全国で実践してきた。今では九州はもちろん中国、四国、関西、中部、関東、東北まで全国各地に広がり、この日も評判を聞きつけた人が視察に訪れていた。
「評価される中で育った子どもは、大人の顔色を見て答えを言うクセがついてしまいます。トーク・フォークダンスを通じて、誰もが自分の言いたいことを言える、そして、そんな考えもあるかもねと受け止め合い、多様性を認め合う寛容な社会になることを願っています」と山口さん。
長らく人は人と対面で話しながら仕事を進め、生活していた。しかし、パソコンや携帯電話が急速に普及し、今や1日のほとんどをパソコンや携帯電話の「画面」と向き合って過ごす人が増えているのではないか。そんな日常から離れて、地域の子どもと向き合う時間は、大人にとってもかけがえない体験に違いない。トーク・フォークダンスは生徒にも大人にも豊かな時間となり、人々や地域を変える確かな原動力になっていた。
