背景のひとつとしてあるのは、単価の壁だ。牛丼は安価であるがゆえに客単価が伸びにくい。対してラーメンは、比較的価格帯を引き上げやすく、ブランド次第では高付加価値化も可能だ。加えて、国内市場が成熟する中で新しい売り上げの柱を求める必然もある。
そんな中で登場したのが、すき家の「とん汁みそらーめん」である。ポイントは明確だ。既存の人気商品である「とん汁」をそのまま活用している点にある。
牛丼チェーンにおいて、とん汁はサイドメニューの中でも重要なポジションだ。寒い時期を中心に高い支持を集め、具材も多く満足度が高い準主役級の商品。通常のみそ汁より単価も高いため、店としても売りたい商品だ。これをラーメンに転用することで、以下のようなメリットが生まれる。
・新規食材の追加がほぼ不要
・調理オペレーションの変更を最小化
・食材ロスの削減
・既存顧客への受容性が高い
外食ビジネスにおいて、オペレーションの複雑化は即コスト増に直結する。その意味で、「とん汁を麺にかける」という発想は極めて合理的であり、すき家らしい堅実な一手と言える。
とん汁と麺文化の距離の縮まり
実はこの商品、完全な新機軸ではない。新潟のローカルからじわじわと広がっている「とん汁ラーメン」という文脈が存在する。
代表格が新潟県妙高市にある「とん汁の店たちばな」で提供しているとん汁ラーメンだ。味噌ベースの旨味あふれるとん汁に麺を合わせた一杯は、長年にわたり地元で愛されてきた。
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【首都圏を中心に認知が拡大】
