窪田:それはきっと大きなインパクトがあったことでしょう。著名な経営者として発信力をお持ちの松本さんが取り組んでいらっしゃるからこそ、影響もより大きくなるのだと思います。財団はたくさんの人数で運営しているのですか?
松本:総勢でも10人に届かないぐらいで、専任のメンバーは代表理事の1人だけ。あとはみんなプロボノ的に参加してくれている人ばかりです。それぞれ本業を持っているけれど、熱い思いがあって手伝ってくれています。
ルビを求めている人たちがいた
窪田:その人数で、社会にしっかりインパクトを与えているのはすごいですね。私も「1日2時間外にいれば、子どもの近視が防げる」ということを日本中に広めたいと思っているのですが、なかなか浸透させることができません。新たな価値を多くの人に知ってもらうためには、何が必要だと思いますか。
松本:ルビが比較的スムーズに浸透しつつあるのは、漢字と読み方についての問題意識を、潜在的に持っていた人が多かったからではないかと思います。顕在化していなかっただけで、私と同じように、ルビを求めていた人が一定数いたのではないかと。
東大の藤井総長に「ルビって大切だと思うんですよ」とお話ししたときも、最初はポカンとされていました。でも理由を話すうち、「なるほど、それは確かにあったほうがいい」と言ってくださって。必要性も理解してもらいやすいのだと思います。
昨2025年の夏には、上智大学で「ルビフルシンポジウム」を開催しました。すでに多文化社会となっている日本で、企業や学校はどう行動すべきかをテーマにしたものです。ここにも多様な人が参加してくれましたよ。
例えば、外国人の就労支援をしているNPOの方。日本で外国人が働くにはさまざまな困難がありますが、その一つが難しい専門用語の多い資格試験です。でも工事現場をよく見てみると、電気工事を担っている外国人が多いことに気が付くと思います。
電気工事士の試験内容は理数系の問題が多いので、漢字さえ読めれば外国人でも比較的合格しやすいのです。そこでこのNPOの方は、電気工事士協会にかけ合って、試験問題にルビ対応を導入させました。彼女は現在も、「やさしい日本語」で工事士学科試験の講師を務めています。
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【芥川賞受賞作のアクセシビリティ向上】
