「本当の両国はこっち」「もともと人が住む街じゃない」東京駅から12分、新宿駅から20分なのに「都内屈指の地味タウン」の実態

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池波先生はその後も大吉に通ったらしく「いろいろ食べて見たが、材料の仕入れによほど努力をしているのだろう」とほめている。池波正太郎ほどの食通ではないが、私の印象もまさにこの通りだった。素朴な味だが、どれも非常に美味しくいただいた。

浅草橋が持つ「垣根の低さ」の正体

突然だが、私はレザークラフトが趣味だ。10年ほど前に小さな巾着を作って以来、かなりはまっている。レザーの世界では、浅草橋は聖地のような街だ。駅のまわりには革製品はもとより、皮革や加工のための道具、ベルトのバックルなどの金具、ファスナーなどを扱う店が多くある。私も定期的に通っている。

筆者手製のトートバッグ
筆者手製のトートバッグ。素材はすべて浅草橋で揃えた(筆者撮影)

そんななかの一軒、「レザーアウトレット アビチ(台東区浅草橋1-34-5)」の店主・藤原元さんに聞いた。

「私ももともと趣味で革をはじめて、この街に来るようになりました。今のこの店は、客として通っていたのですが、前の店主が高齢で跡継ぎもいないということで、2年ほど前に私が引き継ぐことになったんです」

浅草橋は江戸時代から武具の生産地として知られていた。そんなことから革の道具や製品が集まるようになったという。

「私は浅草橋ではまだ新参者なんですが、この街の人たちは本当に垣根が低いんです。もともと人形や玩具の問屋街として、外から来る職人や商人を受け入れてきた歴史があるからか、よそ者に対しても構えないのかもしれませんね。商売の情報も自然と共有されますし、“一緒にやっていこう”という空気がある。長く続く街なのに、閉じていない。そのバランスが、この街のいちばんの魅力だと思います」(藤原さん)

「レザーアウトレット アビチ」の店主・藤原元さん
「レザーアウトレット アビチ」の店主・藤原元さん(筆者撮影)
「レザーアウトレット アビチ」の外観
「レザーアウトレット アビチ」の外観(筆者撮影)

浅草橋は「人形と革の街」として語られることが多い。しかし実際に歩いてみると、この街の本質は産業の種類ではなく、「受け入れてきた歴史」にあるように感じた。

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