横山さんはこの街の良さを次のように話してくれた。
「浅草橋は、秋葉原、両国、浅草、日本橋などに囲まれていることもあって、知名度的にはちょっと沈んだ印象なんですよね。ただし、交通の便はとてもいい。JRを使えば新宿もすぐだし、地下鉄を使えば成田空港にも羽田空港にも行きやすい」
そこまでは話してくれた横山さんだったが、ここで少し間を置いて、
「でもね、浅草橋は基本が問屋街だから、商人とか職人の街なんです。要するに仕事をしに来る街だった。つまり、昔は住む街じゃなかったんですね。夜になると閑散としてましたよ。最近はそこかしこにマンションができて、住む人も増えてきたので、スーパーマーケットもいくつかできた。でもやっぱり、日常の買い物はちょっと苦労しますね(苦笑)」
それでも、浅草橋が魅力ある街であることにかわりはない。横山さんが続ける。
「浅草橋界隈には昔は花柳界があったんですよ。だから天ぷら屋、蕎麦屋、寿司屋などの老舗があって、人気です」
そんなわけで、この日は横山さんに教えてもらった老舗洋食店を訪ねてみることにした。
池波正太郎が通った洋食の名店
浅草橋駅から歩いて約5分。「洋食 大吉(台東区柳橋1-30-5)」は、昭和の文豪・池波正太郎が通った店だ。エッセイ集『新しいもの 古いもの』には、「まだ微かながらも大川端(今の隅田川/著者注)の名残をとどめている柳橋の花街の近くにあるこの洋食屋を見つけて、ぶらりと入ったのは、今年の二月ごろであったかとおもう」とある。
1970年代の半ばに書かれたものだ。前出の横山さんが話してくれたとおり、その頃はまだこの街にも花柳界が健在だったのだろう。
同エッセイは次のように続く。
「そのとき、私はオムレツでウイスキー・ソーダをのみ、ヒレカツレツをつまみ、そのあとでチキンライスを食べた」
かなりやんちゃな胃袋だ。私も池波先生をまねて、オムレツ(750円)、ヒレカツ(1400円)を注文したのだが、あいにくチキンライスは現在のメニューにはなかった。なので一番近いと思われる、オムライス(1380円)を注文。





















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