92歳中等度認知症でも自宅暮らしを続けられる"理由" 「認知症悪化=施設行き」の誤解 「認知症リハビリ」という選択肢
「ケイ子さん、今日は調子良さそうですね」
「そうだね、あまり痛くないねぇ。ありがとね」
作業療法士の石田遥子さん(26)が話しかけると、伊東ケイ子さん(92)が笑顔でそう感謝した。襟元とボタンが並ぶ前立て部分が花柄模様の黒色カーディガンと、黒のスウェット姿。ケイ子さんはマンションの和室に置かれたベッドにあお向けに寝てリハビリの最中だった。
「ありがとう」を連呼する明るいリハビリ現場
記者がその様子をスマホで撮影していると、「こんなババアを写していただいてすみませんねぇ。ありがとう、ワッハッハッハ」と高らかに笑った。晴天に恵まれた2026年2月上旬の平日午後、都内でのことだ。
変形性膝関節症(膝の軟骨がすり減って痛む病気)を長年患い、ケイ子さんは歩く際にガニ股になりやすい。同居する娘の老山睦子(おいやまむつこ)さん(64)の希望は、「外出時は車椅子利用だけど、家内ではできるかぎり自力歩行を続けてほしい」。悪化すると寝たきりになってしまうからだ。
石田さんは、ケイ子さんのこわばりやすい両脚外側の筋肉をもんでほぐし終えると、両脚を上げて自力で閉じたり開いたりするようにうながし内股の筋肉を鍛え始める。膝関節の痛みが悪化するのを防ぐためだ。
石田さんはそれ以外にも、ケイ子さんが家内で転倒しないように本人が歩く経路を見極め、居間からベッドのある和室やトイレに移動する際に、必要と思われる箇所に手すりやマットをレンタルで設置する提案も行ってきた。
ケイ子さんのアルツハイマー型認知症が発覚したのは20年3月。当初は軽度との診断で、進行を遅らせる薬を処方してもらってきたが、約6年後の今は中等度まで進んだ。だが、ケイ子さん自身の「できるだけ自宅で過ごしたい」という希望と、住環境を変えると認知症が進んでしまうこともふまえ、石田さんによる週1回の訪問リハビリ以外にも、デイサービス施設に週2回通うなどしながら自宅療養を続けている。





















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