92歳中等度認知症でも自宅暮らしを続けられる"理由" 「認知症悪化=施設行き」の誤解 「認知症リハビリ」という選択肢

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認知症が進むと自宅で暮らし続けられないので老人施設に行くしかない、というのは実は認識不足な面がある。認知力が低下しても自宅で暮らし続けるために、作業療法士が本人や家族のニーズにそって、他の残存能力を鍛えることも含めて有効活用するようにうながすことを「認知症リハビリ」と呼ぶ。人間が秘める能力は多様だからだ。

仮に料理の仕方を忘れれば、ある作業療法士はその手順を複数枚のカードに分け書きして示しながら、一緒に料理を作って段取りを思い出すようにする。スケジュールを忘れやすい人には、スマホのアラーム機能の使い方を練習してもらい、仕事の継続を支える場合もある。そうして認知症の人たちの従来の生活を支える作業療法士の活躍ぶりは、残念ながらあまり知られていない。

元来、作業療法士は精神や身体に障がいを持つ人が自宅や学校、職場での日常を続けられるように支援してきた。「認知症リハビリ」はその一つ。

「人生の健康」を引き出すと病みつきになる

ケイ子さんが、石田さんの勤務先である桜新町アーバンクリニックを受診したのが22年1月。同クリニックの作業療法士の認知症リハビリを、週1回受け始めたのが同年7月。石田さんは3人目の作業療法士で、25年5月からケイ子さんを担当する。30分ほどのリハビリ中にケイ子さんが鹿児島県の郷里について繰り返し話す度に、石田さんは「うらやましいです」「いいですね」とにこやかに相づちを打つ。2人の会話はまるで祖父母と孫のようだ。

「伊東さんはおしゃべり好きで明るい方なので、ご家族で年1回温泉旅行に行かれたり、お孫さんたちと外食を楽しまれたりするのを支えられているというのが、私のやりがいですね」(石田さん)

突っ張り棒と段ボールなどを活用して家の中を動きやすくした(筆者撮影)

その人らしさを発揮してもらうのも作業療法士の大切な仕事。それを「人生の健康を引き出す」と呼び、そんな瞬間に立ち会うとこの仕事は病みつきになると熱く語る人もいる。身体は病んでも心まで病む必要はない。他方、身体は病んでいなくても心を病んでいる人もいる。

次ページ周りの人を笑顔にさせる能力が高いケイ子さん
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