92歳中等度認知症でも自宅暮らしを続けられる"理由" 「認知症悪化=施設行き」の誤解 「認知症リハビリ」という選択肢

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92歳のケイ子さんも声には張りがあり、膝の具合も万全とは言えないだろうに30分ほどの施術中、孫のような石田さんに何度も「ありがとう」を口にした。周りの人を笑顔にさせる能力は高い。かつては不動産鑑定士や司法書士を兼務した夫の事務所に勤め、無口で仕事一本槍の夫に代わり、多くの対外折衝を担っていたというキャリアを彷彿とさせる。

だから誰も訪問してこない日のケイ子さんは寝てばかりいる、という娘の睦子さんの話をすぐには信じがたい。

よそゆきの顔で他人の役に立てる「かんたき」

テレビ画面に映る動画サイトの男性講師を真似て、ケイ子さんら5名の女性利用者たちが、椅子に座ったまま体操で体を動かしていた。時に「一つ、二つ、三つ」と講師の掛け声を真似て大きな声を出したり、自分の左右に座る利用者たちに「(講師の)動きが早いねぇ」とか、「疲れるねぇ」と率先して声がけしたりして笑顔を引き出すのもケイ子さんだ。

体操中の伊東さん(筆者撮影)

冒頭取材の翌週平日、昼食前の時間帯だった。ここ「ナースケア・リビング世田谷中町」は、「看護小規模多機能型居宅介護事業所(通称『かんたき』)」と呼ばれる。彼女はそこで通いのデイサービスに参加していた。それ以外に訪問リハビリや看護サービス、さらにはショートステイ(短期宿泊)も可能で、最大6人まで宿泊できる。

利用者から見れば、従来は個別に通ったり訪問してもらったりする必要があったことを、同じ事業者の顔見知りの職員から受けられるワンストップサービスの利点は大きい。安心感や親近感こそが大切だからだ。

もう一つの特長は、気管切開や呼吸器の取り扱い(「医療的ケア」と呼ばれる)ができる看護師が日中常駐していること。12年から「かんたき」が全国で始まったことで、従来は希望してもかなわなかった自宅療養をする人たちが全国で増えてきた。

体操中の伊東さん(筆者撮影)

この「世田谷中町」で働く介護福祉士の春日翔太さん(38)は、ケイ子さんにとっては「ここはよそゆきの顔を見てもらえる場所でもあります」と話す。

「デイサービスやショートステイを利用する際、ケイ子さんは今日みたいに元気にリーダーシップを発揮されます。明るくて前向きなケイ子さんらしさを、周りの方々に見てもらえる時間であり場所なんですよ」(春日さん)

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