92歳中等度認知症でも自宅暮らしを続けられる"理由" 「認知症悪化=施設行き」の誤解 「認知症リハビリ」という選択肢

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

「以前は洗濯物のきれいな畳み方などを母に教えようとしてうまくいかず、1人で苛立っていた時もありましたが、もう諦めました。とにかく元気でいてくれればじゅうぶんだと思うと、私の気持ちも楽になりました」(睦子さん)

以前の母親と認知症になってからの母親との落差。娘として永遠に頼れる存在でいてほしいという願い。その三角形の狭間で誰もが悩み苦しむ。

私も子供の頃はオムツの処理を母にしてもらっていた

一方で、認知症は進行を遅らせることはできても治ることはない。本人との関係を変えたいのなら、家族や周りの人たちが考え方と対応の仕方を変えるしかない。睦子さんは一定の歳月を経てそこにたどり着いた。

「一見元気に見えるかもしれませんが、近頃の母は着替えも私が順番に渡さないとあべこべに着ちゃったり、排尿と排便の感覚がなくなってきていて、汚れた下着をそのまま持ち上げてしまったりします。でも、私も子供の頃はオムツの処理を母にしてもらっていたわけで、それは全然苦にはなりません」(睦子さん)

左から娘の老山さん、伊東さん、作業療法士の石田さん(筆者撮影)

睦子さんにはもう一つ気づいたことがある。ケイ子さんが認知症を経て、周りの人たちに感謝の気持ちを表現する機会が増えたこと。記事冒頭の石田さんとのほほえましい会話があらためて思い返された。

「そんな母を見ていると、『私たちを支えてくださっている方々への感謝の気持ちを、あなたもきちんと伝えなさいね』と、教わった気がしています」(睦子さん)

認知症で記憶力は失われても、個人差はあれ喜怒哀楽の感情は残っていると言われる。そしてケイ子さんの「ありがとう」には周りの笑顔を引き出す力がある。

荒川 龍 ルポライター

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

あらかわ りゅう / Ryu Arakawa

1963年、大阪府生まれ。『PRESIDENT Online』『潮』『AERA』などで執筆中。著書『レンタルお姉さん』(東洋経済新報社)は2007年にNHKドラマ『スロースタート』の原案となった。ほかの著書に『自分を生きる働き方』(学芸出版社刊)『抱きしめて看取る理由』(ワニブックスPLUS新書)などがある。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事