ブーニンの沈黙と再生――天才ピアニストは「キャリア最大の危機」をどうやって乗り越えられたのか
ブーニン:それから身長も決して高くなかった。体が小さかったんですね。決してピアノの演奏に向いている体ではなかった。単に鍵盤を押す……これは素人がやりがちですが、押すだけではダメなんですね。そうではなくて、意識でコントロールして、むしろ鍵盤を「受け取る」ようなイメージが大事なんです。私もそれが実際にできるようになるまで、数年かかりました。ピアノという楽器をマスターできるようになったと意識したのは、それからさらにあとの14歳か15歳になった時です。
――昔から、教養の高い人たちに囲まれていたそうですね。ブーニンさん自身も読書家だと聞いていますが、それは音楽を理解する上で役立っていますか。
ブーニン:とても大事なことだと思います。幸いにして、若い時からそういった知的レベルの高い方たちとお話する機会がありました。作家、ジャーナリスト、政治家、彫刻家、文学と関わりのある人、そしてもちろん音楽とも関係がある人……。思春期の頃は、どういう人に会って、どういう人と話すかがすごく大事なんですね。私の周りの大人たちは、私と同じ目線で話をしてくれました。
ギーゼキングに教えを受けて
――以前「音はギーゼキングに習った」とおっしゃっていましたね(ヴァルター・ギーゼキング。ドイツのピアニスト・作曲家)。
ブーニン:ギーゼキングは私の家族の中で全員が一番好きなアーティストだったんですね。響き、フレージング、表現などがすべて私にとって魔法のようなもので、すぐに惹き付けられてしまいました。当時ソ連で手に入る限りの録音を聞いていました。14~15歳頃の私にとって高みにあるものがギーゼキングでした。
彼の表現は本当に自然で、まるで人の声のような感じと言えばいいでしょうか。あるいはまた、庭師の手を借りずともそこに花が咲いているような……。
――そんなギーゼキングからの教えを原点に、今日の「ブーニンの音」ができたのですね。
ブーニン:それを維持できるようにと願っています。だんだんと難しくなってきました。
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