ブーニンの沈黙と再生――天才ピアニストは「キャリア最大の危機」をどうやって乗り越えられたのか
――はい。
ブーニン:今の私は簡単です。障害のある老いた男性。それが今の私です。
人生を振り返って全体として見れば、私は非常に活力溢れる人間だと思っています。さまざまな抵抗に抗って、戦って、常に勝ってきた。そこで勝利を収めてきた。何かを自分が望んだときに、それを手にいれることができました。
ただ時々、自分に対して、なんだか気の毒だなと思う部分もあります。
というのも、たとえば他者から「いや、それはやらない方がいいよ」とか「できることだけやればいいよ」と言われても、いろんなことをやってしまう。それはもしかしたら愚かなのかもしれないけど、愚かさというのも人間の一部であるというふうに考えています。
その部分は、ちょっと自分が可哀想かな、同情する部分ですね。
――そのすべてを通じてファンはブーニンさんに惹かれているんでしょうね。
ブーニン:ダンケッシュ(ありがとう)。
子どもの頃は手がすごく小さかった
――ブーニンさんの音楽の基礎は、お母さんの教えにあるそうですね。
ブーニン:母もピアニストでした。当時住んでいたアパートで、ツアーのための曲の練習をずっと家でやっていて、それをずっと聞いて育ちました。そこから私も音楽という道に入っていった感じです。あるとき、母が公演ツアーに出かけているうちに、私がモーツァルトのメヌエットを弾けるようになっていました。母は衝撃を受けて、「これはレッスンをするしかないだろう」と。
――その後、進学した学校ではどんな教育を受けたのでしょうか。
ブーニン:その学校が私の祖父ネイガウスが設立したことを当時は知らされていませんでした。ですから「ネイガウスの孫」としてではなく、1人の生徒として入学し、同世代の同じ目的と関心を持っている子どもたちと過ごしたのは、とても生産的で素晴らしい時間でした。音楽がもっと身近になったし、それが日々の生活の一部になっていきました。
――では、その頃は毎日の演奏も楽しかったでしょうね。
ブーニン:それはないです。なぜかというと、私は手がすごく小さかったからです。




















