水害を乗り越え、過疎の無人駅で売る弁当が《九州駅弁グランプリ5冠》!…素朴な田舎料理がなぜ人の心を動かすのか?
そんな嘉例川駅に人の流れが生まれたのは、九州新幹線の部分開業に合わせて運行を開始した観光列車「はやとの風」の存在が大きい。駅弁「百年の旅物語 かれい川」は、その運行開始の記念イベントで販売したことがきっかけで、「はやとの風」車内販売や土日祝日の嘉例川駅でも販売することになった。
観光列車の休止と土砂災害を乗り越えて
しかし、「はやとの風」は2022年に休止してしまった。
さらに、2025年8月の記録的な大雨に伴う土砂災害で線路が流され、現在嘉例川駅に列車は来なくなった。しばらくの間は嘉例川駅に続く道路も通行止めになり、大きく迂回しなくてはたどり着けない状態に。土台ごと流された線路の復旧工事は、現在も進行中。嘉例川駅へは、鹿児島空港からのバスが一日に数本あるのみである。
普通に考えれば、駅弁が販売終了になってもおかしくない状況だった。実際2025年8~9月は売り上げが一日10個くらいと大幅に落ち込んだ。
それでも山田さんは販売を続けた。
「ありがたいことに、うちのことを知ってわざわざ買いに来てくださる方がいます。だから休むわけにはいかないと続けました。中にははるばる北海道から来てくれた人もいて驚きました」
その後、道路の通行止めは解除され、2025年10月頃からは再び売り上げは持ち直した。
今や嘉例川駅には列車も通らない。それでも土日祝日になると駅弁が売られ、多くの客が買いに訪れる。駅弁を買いに来る客のほとんどは“車”だ。駅弁は基本的には列車旅のお供に買い求めるものであるが、これは「車でわざわざ買いにいく駅弁」なのだ。これはもはや、遠くから人を呼ぶ強い力を持った地域名物である。
後編では、この駅弁がいかにして生まれ、多くの人に知られるようになったのか、そのストーリーを追う。
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