日本が直面する「遅れてきた多宗教社会」の実態 善意だけでは解決できない、移民との摩擦の深層

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松本:移民の増加とともに文化的摩擦が増えるという懸念は、「ネトウヨ的」な排外主義は論外としても、日本社会として議論や検討しなければいけないでしょう。

ただし私は悲観ばかりをしているわけではありません。たとえば、ヒンドゥー教は先ほども少し触れたように、本来は宗教多元主義的な考え方の宗教です。また、英国では反イスラーム教の暴動が起きたとき、じつは同時に人種差別主義に反対するデモも起きています。

これから日本には、さまざまな宗教を信仰する人びとが入ってくるでしょう。そのなかには本来のヒンドゥー教徒のように、ほかの宗教に対して理解を示す移民もいるはずです。

理想論かもしれませんが、私はそこに「救い」を見出したい。たとえ緩くても、日本でも宗教多元主義が実現することを願いつつ、現実的にはどのような課題が生じるか、具体的に議論を尽くさなければいけないと思うのです。

どのように宗教多元主義を実現するのか

2024年7月、広島で「平和のためのAI倫理:ローマからの呼びかけにコミットする世界の宗教」という国際会合が開催されて世界の宗教指導者が集まりました。教皇庁生命アカデミー、世界宗教者平和会議日本委員会、イスラーム教からアブダビ平和フォーラム、ユダヤ教からイスラエル諸宗教関係首席ラビ委員会が共催者に名を連ねました。

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AIという科学技術を今後、宗教的な観点からいかに倫理的に活用すべきか議論がされた会合で、日本政府からは河野太郎デジタル担当相(当時)などが参加しました。

さまざまな宗教の指導者が宗教そのもののあり方を議論すれば、やはり紛糾する可能性が高いでしょう。でもAIなどの地球的課題がテーマであれば、一つの方向に向かって話し合うこともできます。

私も研究者としてこの会合に出席しましたが、これこそが宗教間対話のあり方なのだと感じました。日本が今後さまざまな宗教の移民を受け入れたとき、どのように宗教多元主義を実現するのか、そこにヒントが眠っているように思います。

池内 恵 東京大学先端科学技術研究センター教授

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いけうち さとし / Satoshi Ikeuchi

東京大学先端科学技術研究センター教授。1973年、東京都生まれ。東京大学文学部イスラム学科卒業。同大学大学院総合文化研究科博士課程単位取得退学。国際日本文化研究センター准教授などを経て、2018年10月より現職。著書に『現代アラブの社会思想』(講談社現代新書、大佛次郎論壇賞)、『イスラーム世界の論じ方』(中央公論新社、サントリー学芸賞)、『イスラーム国の衝撃』(文春新書、毎日出版文化賞特別賞)、『サイクス=ピコ協定 百年の呪縛』『シーア派とスンニ派』(いずれも新潮選書)など。

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松本 佐保 日本大学国際関係学部教授

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まつもと さほ / Saho Matsumoto

神戸市生まれ。日本大学国際関係学部教授。名古屋市立大学人間文化研究所所長を経て現職。慶應義塾大学大学院修士号。英国ウォーリック大学大学院国際政治史Ph.D.取得。イタリア政府給費受給、ローマの研究所所属中にバチカン使徒文書館で調査。専攻は国際政治と宗教の関係(英米、イタリア、バチカン政治外交・文化)。著書に『バチカン近現代史』や『アメリカを動かす宗教ナショナリズム』他。HPはhttps://www.sahomatsumoto.com/

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