報告書で例に挙げられたような急な予定変更がすべての訪問で起こった可能性がないとは言いきれないが、そもそも予定を知らなければ利用者のもとを訪れることはできない。ただ、調査報告書では直接の言及がないため、調査委員会がどう判断したのかは不明である。
ほかの拠点でも同様の事例
同様の事例は、この拠点とは離れた別の拠点でもあった。元職員は「生活支援員の名前で複数名訪問看護が組まれていた」と証言する。しかし「生活支援員が実際に訪問看護をすることは私が知る限りなかった」(同)。
そもそもこの拠点では、複数名訪問看護をすること自体が多くなかった。元職員は次のように続ける。
「朝と晩、おむつを交換するため一斉に居室を巡回するときには2人で訪問することもありましたが、あとは寝たきりの人の体位交換をするとか、1対1になるとハラスメントの懸念がある利用者を訪問するときくらいです」
だが元職員によれば、1人で訪問看護をした場合でも、複数名訪問看護になっていたことがあった。同行者として基本的には看護師か介護職員の名前が入っていたが、同じ時間帯に別の訪問予定が入っているなどでシフトに入れられる職員の名前が足りなくなると、生活支援員の名前を借りていた。
不可解なのは、なぜそこまでして複数名訪問看護を組む必要があったのかだ。
複数名訪問看護加算の制度では、週に何回まで加算を請求できるか、加算の額などが、利用者の病名や同行する職員の資格などによって細かく規定されている。医心館の入居者の多くを占める末期がんや難病患者に対してこれを実施する場合、「看護師+看護師」の2人の組み合わせでは週に1回までしか加算を請求できない。一方、「看護師+看護補助者」の組み合わせであれば回数制限が外れ、毎日算定することができる。
前出の調査報告書によると、アンビスHDが複数名訪問看護加算を取得する方針としたのは20年4月からのこと。新型コロナ禍や診療報酬改定による収入減をカバーする目的があった。
以降、医心館の各拠点は「本社から、複数名訪問看護を日勤帯に積極的に設定するよう(加算の算定をするよう)推奨されていた」(同報告書)。24年の研修資料には、週に1回は看護師2人で算定をし、残りの6日は看護師がメインで、看護補助者を同行者として算定をする、と説明されている。
調査報告書は、管理者が「複数名訪問看護の必要性や相当性等を個別的に十分勘案しないまま一律にルート設定していたというのが実態であろう」と分析している。
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【消えない疑問】
