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NFLスーパーボウルから読み解くアメリカの経済・AI・文化の最新トレンドとは? "スポーツに興味ゼロ"の経営者も知らないと損をする

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アメリカの南部や中西部において、アメリカン・フットボール(以下、フットボール)は単なるスポーツを遥かに超え、地域コミュニティーを結ぶ社会的接着剤だ。

その存在感は教会と並ぶほど地域住民の日常に溶け込んでいる。金曜の夜には、高校の競技場が投光照明に照らされたコミュニティーの祭りとなり、マーチングバンドやチアリーダーと共に地域の一体感が高まる。さらに土曜日には、大学がその熱気を一段と高める。アラバマ大学やオハイオ州立大学のような名門が地域間のライバル意識や郷土愛を刺激し、巨大な熱狂を生み出している。

現代において、TikTokなどアルゴリズム駆動型のプラットフォームが生み出すデジタル孤立化の影響で地域コミュニティーが分断されつつある中、アメリカにおいてフットボールは地域社会を支える数少ない共有体験として貴重な存在だ。

さらにフットボールは経済や地理的要因とも深く絡んでいる。特に、製造業を中国との競争により失い(いわゆる「チャイナショック」)、中流階級が衰退した地域ではなおさらだ。かつての安定した製造業の職が激減した中、才能ある若者にとって、スポーツ奨学金を通じた高等教育への道が開けるという現実も無視できない。

CMにはアメリカ経済のトレンドが反映

スーパーボウルのCMは、アメリカ経済のトレンドを鋭く映し出す指標でもある。今年も例外ではなく、CMからは時代が抱える経済的不安と成長機会を鮮明に見て取れた。

過去を振り返ると、スーパーボウルの広告は時代を反映し、さらに動かしてきた。

特に有名なのが、1984年にアップルが放映した「1984」の広告だ。スティーブ・ジョブズの指示でリドリー・スコット監督が制作したこのCMはたった一度の放映で、IBMの無味乾燥な企業主義に対し、アップルを大胆な個人主義と創造性の象徴として位置づけた。この一瞬の広告が、マーケティングのパラダイムを変え、後にアップルがIBMの時価総額を15倍も上回る予兆となったことは注目に値する。

リドリー・スコット監督が制作したアップルのCM(写真:CM動画からキャプチャ)

しかし、スーパーボウルのCMは株式市場バブルの前兆となることもあった。00年開催のスーパーボウルでは、ペッツ・ドットコムを含むドットコム企業14社が登場したが、これはインターネットバブル絶頂期の象徴となり、その後多くが破綻した。

22年の「クリプトボウル」でも仮想通貨企業4社がCMを放映し、特にFTXは「乗り遅れるな」と投資をあおったが、そのわずか数カ月後、仮想通貨市場が大暴落し、FTXも詐欺容疑で破綻した。

プリングルズは生成AIを用いたCMを放映した(写真:プリングルスCMより)

そして今年のスーパーボウルで大きく注目を集めたのはAI(人工知能)だった。放送された66本のCMの内、実に10本が直接的にAI企業を宣伝し、さらに5本は制作自体にAI技術を使用した。AI関連CMは全体の23%を占め、この分野が抱える壮大な可能性と同時に内在する脆弱性をも予感させる内容となった。

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