彼が着目しているのは移民の減少による住宅市場でのデフレ圧力だ。アメリカでは移民流入減少や不法移民の強制送還によって、外国生まれの人口が減少している。人口動態統計では、2025年1~8月に外国生まれの人口が220万人減少した。 バイデン政権下では、2021年1月〜2025年1月にかけて830万人増加していたことに比べると、急激な変化だ。
外国生まれの人は財を需要する家計でもあり、財を生産する外国人労働者でもある。外国生まれの人を経済から取り除くと、需要と供給の両面を減らすことになる。そのため一般には、需給バランスに大きな影響を与えない。
しかし、住宅市場は特別で、外国生まれの人がいなくなっても、既存の家はなくならない。新築の件数には影響がでるが、新築は全体の供給の一部にすぎない。このため、需要の減少に比べて供給(中古+新築)の減少は緩やかとなり、需給バランスが崩れ、家賃に低下圧力が生じる——これがミラン氏の理論だ。
ミラン氏主張に反し、「移民減少はインフレ的」が有力
一見理論的でもっともらしいミラン氏の主張だが、賛同者は多くない。筆者は10月中旬、IMF(国際通貨基金)世界銀行総会に合わせてワシントンD.C.とニューヨークを訪問し、アメリカ系投資銀行のチーフエコノミストなど、多数の専門家と意見交換を行った。その結論は、移民減少は逆にインフレ圧力を生み、スタグフレーションの傾向を強めるというものだ。
まず、しばしば指摘されたのが、住宅市場の特性である。多くの移民は持ち家ではなく賃貸アパートメントに住むが、消費者物価指数(CPI)の構成要素としては、家賃(rent of primary residence)約7.5%に対し、持ち家(帰属家賃<owners’ equivalent rent of residences>)が約26.3%と、住居費の多くは持ち家が占める(米労働統計局(BLS)のCPIウェイトを参照)。
加えて家賃の改定頻度は低く、CPI統計への反映も緩やかに行われる。ミラン氏が主張するデフレ圧力チャネルがどこまでCPI全体に影響を持つかは不透明なのだ。
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