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歴史背景が似る「台湾と沖縄」がすれ違ってきた不幸。未来を見据え議論していくには現在置かれた状況を理解することが不可欠

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現在の台湾をめぐっては、「台湾はしっかりしろ」「おとなしくしていろ」といった、上から目線の要求を突きつけるような主張にしばしば出くわす。こうした、台湾側の感覚とは相容れない主張が蔓延する背景には、昨今の国際情勢に加え、日米中という大国間の利害が台湾や沖縄に複雑に影響を及ぼしていることがあるだろう。

台湾有事――。2020年代に入って、この言葉が日本で一気に広がった。記事データベースサービスの日経テレコンで「台湾有事」と検索すると、該当する記事は日本の全国5紙で2017年には6件のみだったが、それから毎年13件(2018年)、24件(2019年)、36件(2020年)、101件(2021年)と増えていき、2022年には一気に1397件にまで増えた。

台湾情勢を理解したいという需要が高まり、筆者を含めた台湾をウォッチしている者や専門家はメディアへの登場や講演、企業へのレクチャーなどに駆り出される機会が一気に増えた。しかし、台湾への関心の高まりは、誤解や偏った情報に基づく台湾認識がさらに流通する契機にもなった。

人々は情報を欲しがるときに、確立された方法論に基づいた学術研究や取材に基づいた公平・公正な情報を欲しているとは限らない。複雑な台湾情勢を単純明快な自分好みに沿ったストーリーで解釈したいというニーズはやはり存在し、その需要をうまく捉えた、まことしやかな言説を流す人も増えた。

例えば日本で憲法改正や防衛力の強化を求める立場の者は、台湾情勢の緊迫度を過度に強調し、日本の防衛政策に活用しようとした。逆に護憲派や防衛強化に反対する立場の者は、台湾情勢の緊張を過少に評価した。

いい加減な台湾認識が広まる理由

こうした言論空間は、日本の台湾認識・言説史の観点から言えば、「戦後日本の政治対立軸と結びついた台湾認識」と筆者は定義している。自らの政治的立場に都合よく引き寄せるために、歴史や現状への正確な理解をおろそかにした台湾に関する言説が広がっているということだ。

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