静岡・長野の空白地埋める「国鉄新線」なぜ幻に? 「暴れ天竜」に架設された長く狭い人道橋の謎

天竜川は長野県の諏訪湖から南下し、愛知・静岡県境を経て静岡県の遠州灘に注ぐ1級河川だ。赤石山脈沿いの険しい地形を縦断し、古くから「暴れ天竜」と呼ばれて水害が多発していた。一方で急流を生かしたダム式発電所が多数建設され、日本でも有数の水力発電地帯になっている。
全長200km以上に及ぶ河川だから橋も多いが、そのなかに「夢のかけ橋」という、ちょっとユニークな名前の橋がある。場所は静岡県浜松市天竜区の山間部。国道152号沿いの「道の駅 天竜相津花桃の里」から天竜川の船明ダム湖をまたぎ、静岡県道360号渡ヶ島横山線に接続する。
構造としては下路アーチ橋だが、天井のアーチ部材と橋桁の補強材の間にケーブルを斜めに張った「ニールセンローゼ橋」を採用しているのが特徴だ。剛性が高く地震にも強いという利点がある。
「幻の鉄道橋」を活用した人道橋
この橋がユニークなのはこれだけではない。全長は473.7mとかなり長いが、幅は3~5mと狭い。車道なら1車線分、鉄道なら単線分しかなく、歩行者・自転車専用の人道橋だ。自動車交通が主体で歩行困難な高齢者も多い山間部に長大な人道橋を整備しても、あまり役に立たないのではないかと思う。
そんな場所になぜ人道橋を整備したのか。そこには「佐久間線」という、幻に終わった国鉄ローカル新線の遺構を活用するという目的があった。
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