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「余ったパンを捨てるのをやめた」超人気パン屋ドリアン・店主の人生をガラリと変えた"モンゴルの友人からの素朴なひとこと"

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  • 田村 陽至 ブーランジェリー・ドリアン店主
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「安売りすれば? 誰かにあげれば?」

僕はこう返しました。

「できないよ。そりゃ俺だって一生懸命つくったものを捨てたくないよ」

彼女もひるみません。

「でも、やっぱり食べ物を捨てるのはおかしいよ」

「いや、できない。配って歩く時間もないし」

と言い合いになり、最後は、「日本じゃ、しょうがないんだよ!」と声を荒げてしまいました。すごく自己嫌悪でした。泣きたい気持ちでした。正しいのは彼女のほうだったからです。

ドカドカと捨てている日本や自分のほうがおかしいんだ。

食中毒にうるさい現代、売れ残った菓子パンを、次の日に売るとか、誰かにあげることはできない。

だったら、菓子パンはやめるしかない。あんパンを食べたかったら、自分で餡子(あんこ)をはさんでもらえばいい。そう自分に言い聞かせて、まず菓子パンをやめました。

2種類の固くて大きいパンを売る

僕は何億円パンを売ろうとも、ドカドカとパンを捨てるのであれば、なんの価値もないと思います。今まではしょうがなかったかもしれないけれど、これからは本当に許されない。

時代は変わりました。バブルのようなイケイケどんどんの時代ではありません。社会も文化も成熟して大人にならないといけません。

さらに、食パンをやめ、バゲットをやめ、クロワッサンをやめ、ハード系のパンだけにして、ヨーロッパで1年留学して帰国したときに、材料をさらに厳選して、何も具の入っていない2種類の固くて大きいパンだけにしました。

その頃、北海道で小麦を有機栽培する中川泰一さんの粉を使ったときに、「売れ残ったら、全部送ってください。買いますから」と言われました。ゾクッとしました。

農家さんがどれだけ思いを込めて、わが子のように麦を育てているのか、わかっていたつもりだったけど、わかっていなかったかもしれません。安い海外産の小麦粉をドカドカと使っていたら、こんなこと一生わからなかったでしょう。

そんな大切なパンたちは、午前8〜11時まで工房の店先で無人販売して、次に市内の自分の店舗に運び、正午から18時まで販売します。だいたい売り切れるのですが、残った場合は翌日2割引で売っています。

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