「おせっかいになろうよ」、初の"非パナソニック出身"社長が《ガンバ大阪》に吹かせる新たな風

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水谷氏が社長として携わった湘南とガンバの2クラブを比較すると、2023年度の年間売上高は湘南の28億1200万円に対し、ガンバは65億7400万円と約2倍。フロントスタッフ数も湘南の約25人に対し、ガンバは約60人。パナソニックという巨大企業の支援を受けつつ、北摂地域を巻き込みながら成長を続けてきたクラブは、やはり経営規模が違うのだ。

湘南の社長に就任した際には「大変だね」と声をかけられたが、今回は「おめでとう」とストレートに言われることも多かったという。”恵まれた環境”に外部からトップが就任したということで、パナソニックグループ内外における注目度は大いに高まったはずだ。

北摂地域を中心とした熱心なサポーターがチームの躍進を支えてきた ©GAMBAOSAKA

「最初は前社長の小野忠史さんとあいさつ回りをしたんですけど、『新しい社長は何をするんだろう』という見方をしていた人も少なくなかったと思います。それはクラブ内も同じ。正直、僕の比較的自由なキャラクターやマインドに対して『こいついい加減だな』と感じたスタッフもいるかもしれません(苦笑)。

ただ、僕は何事も面白くやるというのがモットー。どの組織でも新たに来る経営者は『改革』とか『変革』と言われますけど、ガンバに関しては2024年のJ1順位も4位。AFCチャンピオンズリーグ(ACL)2の出場権を確保していますし、売上高も72億円と順調に推移している。スタッフもものすごく真面目に働いてくれていますし、とくに自分が号令をかける必要もないくらい、組織として確立されているんです。

ある意味、完成度の高いクラブだからこそ、もう1つ、突き抜けたほうが面白い。『今、やっている仕事が勝点3につながるように考えて仕事をしよう』というのが、僕が最初にスタッフに伝えたことでした」

人付き合いも営業も「おせっかいになろう」

実際、フロントスタッフも「オリジナル10の自分たちがJリーグをリードしなければいけない」という自覚を持って働いている。クラブが長年続けている小学校でのふれあい授業を実際に体験してクラブ入りした人材も数人いて、「ガンバを強くしたい」「日本を代表する組織にしたい」という思いで日々の業務に向き合っている。

貪欲に高みを目指しているスタッフと目線を合わせるため、水谷社長は「1 on 1 ミーティング」を就任直後に実施。全社員・アカデミーのコーチングスタッフとじっくり話をしたという。

「ガンバは何かあればすぐ報告する仕組みができているんです。それはすばらしいことなんですけど、『何とか殻を破れないかな』という気持ちにもなりました。そこで始めたのが「おせっかい大賞」でした。オフィスに箱を置いて、『この人がこんないいことをしていたよ』というのを書いて、紙に入れて、それを共有するんです。

僕は「サッカークラブはファミリーだ」と考えていますし、一体感を持つことが非常に重要。例えば、スタッフの電話対応が芳しくなかったときに『今の言い方はないんじゃない』と、それとなく言えるような空気を作りたい。『おせっかいになろうよ』とも言っていますけど、それがある意味、“水谷流”なのかもしれません」

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