箱田 他の空軍や陸軍でも強めていますか。
坂井 空軍関係で北朝鮮メディアは2025年3月、探知・電子戦研究集団が「新たに開発した偵察・情報収集手段と電子攪乱(かくらん)攻撃システム」や空中早期警戒管制機と見られる機体を金正恩氏が視察したことを報じました(空中早期警戒管制機は記事中言及なく、写真のみ)。
同氏はその後、5月にも自爆無人機攻撃対応など新機軸の各種訓練を視察し、「空対空ミサイル」も初登場しました。
陸軍関係でも金正恩氏が「わが武力の装甲武器体系を早期間内に全般的に更新する」との方針を示しています。
ハード、ソフト両面で刷新
箱田 軍だけでなく、軍需工業にも力を入れているのですね。
坂井 2024年末の朝鮮労働党中央委員会総会で金正恩氏は「国防科学技術の加速的な進歩と防衛産業の急速な発展」を訴えました。2025年5月には重要戦車工場、砲弾総合生産企業所などを相次いで訪れ、生産能力の画期的な強化を指示しました。
こうした動きは、核戦力の構築に集中することで軍事費の増大を抑制し、経済建設も同時に促進することを標榜した、かつての「並進路線」とは明らかに異なる考え方に基づきます。「新軍拡路線」と呼んでも過言ではないと私は思います。
箱田 新軍拡路線。大きな転換ですね。
坂井 はい。もう1つの特徴は、新型の兵器や装備の開発・導入と並行して、それらを使用する軍の運用態勢の刷新を推進しようとしていることです。
金正恩氏は、さきほど話した党中央委総会で「作戦指揮の情報化、現代化」や「科学的な訓練形式」の導入などの方針を示しました。そのうえで、軍の将校を養成する姜健総合軍官学校を訪れて「現代戦場で成し遂げられる実戦の経験を『われわれ式』に消化習得」することを訴えました。
箱田 なるほど。ハード面のみならず、ソフト面も同時に刷新しようというわけですね。
坂井 さらにそれらの動きとも関連しますが、ウクライナ戦争の教訓を積極的に反映、活用しているとみられるのも最近の特徴です。
その端的な例が無人機の開発・導入を急いでいることです。金正恩氏が2025年3月に「性能向上中の戦略無人偵察機」と「新しい人工知能技術が導入された自爆攻撃型無人機」の性能試験を参観したことが報じられました。また、2024年8月と11月にも同様の視察をしました。
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