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広州、浙江、上海…トランプ関税で新たな活路を開拓する中国の5大ビジネス都市を直撃取材!前編「SHEIN村で起きている異変」

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2025年4月3日、アメリカのトランプ大統領が世界に相互関税を仕掛けることを発表した同日、5月2日から中国と香港からの800ドル以下の小口貨物の免税制度を見直すことを発表した。

発表から5日が経った4月8日、中国による報復関税に不満を持ったトランプ大統領は、小包の税額をさらに引き上げ、最初の発表から一気に3倍に増幅。90%の課税から1件あたり75ドルに増額した。

EC事業者が内部消耗の「内巻」に陥る

6月1日にはさらに150ドルまで引き上げるとしている。近年、積極的に海外進出していたSHEINなどの中国EC事業者にとっては痛恨の一撃となったのである。

「業績は必ず影響を受けるでしょう」

劉さんはこのように語った。想定不可能な関税措置の波状攻撃で、コストは輸出に耐えうるものではなくなってしまった。それにより品物を国内市場に回すほかない状況に陥ったのだ。

「1つひとつ売っていくしかないです。『内巻』の状況がどんどんひどくなっている……」

劉さんの傍らに置かれた洋服の山を見つつ、苦笑いしながらこのように語る。内巻とは輸出できなかった品物を、国内に回して打開しようとする最近の流行語である。広州の状況はかなり深刻だと言える。

次に、塘歩東村を離れ広州市の南西、車で約1時間の佛山順徳区に向かった。ここは中国最大の家具生産と輸出の拠点で、街には約5キロメートルの大通りに、国内海外問わず3400軒の業者が集結。さまざまな家具を2万点以上展示販売している。

公的機関の統計によれば、2024年の佛山の輸出は3800億人民元(約7兆6000億円)を超えた。中でも家電、家具、照明、建材、セラミック、紡績などの「汎用型家具」類は全体の6割を占めている。

そしてこれらは世界最大の消費国であるアメリカに向かうことから、佛山は自ずと中国における輸出の一大拠点となっていた。中国税関の統計では、2025年1月から2月の間、佛山の一般貿易輸出額は727億人民元(約1兆4500億円)、そのうち、アメリカに輸出された額は120億人民元(約2400億円)に達し、17%を占めたのである。

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