窪田:なるほど。もともと勉強をしない子はゲームをやめても勉強はしないと。
中室:そうです。私たちが厚生労働省の縦断調査を用いて行った研究では、小学生がテレビを見る時間を1時間減らしても、勉強時間は男子で最大1.86分、女子で最大2.70分、増加するにすぎないことが明らかになりました。
これ以外にも重要な研究成果があります。それは、能動的な活動と受動的な活動の間では代替はほとんど起きないということです。例えば、勉強やスポーツといった能動的な活動が、テレビを見たりゲームをしたりといった受動的な活動に代替されることが少ないこともわかっています。ですから、子供の学力を高めたいのであれば、そもそも勉強をする習慣をつけることが大事なのです。
1日2時間の屋外活動で目はリセットされる
中室:ゲームが学力に及ぼす影響はあまりないのですが、ただ、健康には影響があります。ゲームをしている子供は肥満になることを示す研究は多く発表されています。目にとってもゲームは良くないですよね?
窪田:もちろん目に良いものではないですが、実は近視とゲームの関係でも誤解があって。よく「スマートフォンが視力の低下につながる」「ゲームをしていると目が悪くなる」と言われますが、少なくともエビデンスがあるのは、ゲームをやっているかどうかにかかわらず、目と見る対象物との距離が近い近見作業がよくないということ。
目の成長に関しては、屋外で遠くを見ることが非常に重要なので、室内にいるのであれば、スマートフォンを見ていても、ゲームをしていても、勉強していても、ぼーっとしていても、実は目に悪い影響があることには変わりがないんです。
中室:ゲームだけをやめても、目が悪くならないわけではないのですね。
窪田:そうなんです。とにかく外に出ることが大事で、1日合計2時間の屋外活動で近視になるのを予防することができます。よく「2時間も外にいるのは大変だ」と言われることもあるのですが、起きている時間のほとんどを室内で過ごしたとしても、たった2時間屋外に出るだけで目への悪影響を打ち消せるのですから、これは朗報ではないでしょうか。子供時代の過ごし方を少し変えるだけで、大事な視力を維持することができるのですから。
