本来、①に示すように、WTO(世界貿易機関)加盟国同士の紛争はWTO上級委員会に裁定を委ねるのが筋であるものの、2019年12月以降、アメリカが委員の再任・信認を拒んでいる。結果、既存委員の任期切れに伴って現在は機能不全に陥っている。見通せる将来に機能の復元は期待できず、この選択肢は検討に値しない。
自国利益にかかわる論点を国際機関に委ねて解決するという発想は、もう随分前からアメリカにはないのである。
残る選択肢である②非関税障壁の見直し、③対米農産品輸入の拡大、④ドル高是正、⑤対米エネルギー輸入の拡大、⑥防衛装備品の新規購入をどう考えるべきか。
まずは④ドル高是正以外の、貿易取引に直接関連する論点を整理してみたい。
効果よりも「譲る」ことに意味がある
この中で「②非関税障壁の見直し」は各論の集合体であり、「譲れるところは譲る」という姿勢で臨むしかないのであろう。
素人目線では、日本の安全基準やEV充電規格を修正するだけでアメリカ車が日本市場で戦えるようになるとは思えないが、「譲った」という事実がギフトになるのであればそれだけでも日本に意味がある。各論での譲歩を重ねて、どれだけ総論としての得点に結びつけるかという話になりそうだ。このあたりは実務家協議の範疇になる。
次に「③対米農産品輸入の拡大」はもっぱらアメリカ産コメの輸入規制を緩和するという話が想像される。
この話自体、短期的にはコメ価格の下落を促すため、社会問題化している感もあるコメ価格の高騰に対する一手として消費者的には歓迎される面もあるように思える。おそらく、飲食店を含む加工業者のコストも下がり、外食価格の押し下げにもつながってくる可能性がある。その意味では政治的・社会的には譲歩の可能性を指摘する声は出てきやすい雰囲気はある。
だが一方、インフレ抑制という短期的なメリットはあるとしても、中長期的なデメリットもある。
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