JR東日本「外国人材の育成」で人手不足補えるか 「特定技能」合格者は現場で就労、他社に拡大も?

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2人の話からは日本で働くということよりも母国で貢献したいという熱意が感じられた。日本の人手不足解消という目的とギャップはないのか。この点について阪口マネージャーはこう話す。

「鉄道は“経験工学”といわれており、一定の年数を就労して技術とスキルを身につけてようやく一人前になる。我々の気持ちとしてはできるだけ長く日本で働いてほしいが、特定技能の制度自体が1号は最長で5年までしか働けない」。

つまり、長く日本で働きたくても5年が上限なのだ。特定技能2号は更新回数の定めがないが、鉄道はまだ認められていない。阪口マネージャーは「もし制度が改正されれば2号にチャレンジしたいという人は多い」と話す。

ということは、母国に帰って貢献したいというのは日本で長く働けないからであり、制度が改正されれば日本で長く働くという選択肢も出てくる。

技術やスキルを身につけた後、日本での就労を続けるか、母国で鉄道業務に従事するかを本人が選択できるというのが最善の形だろう。「最終的にどうするかはあくまで本人が決めることである」(阪口マネージャー)。

なお、JR東日本は技能実習も引き続き継続する。そして、「本人の意向と会社の意向が合致した場合には、技能実習から特定技能の在留資格に移行して就労を継続することを可能とするべく、実習生の長期のキャリアプランに伴走していく」としている。

【写真をもう一度見る】JR東日本の研修施設で鉄道の技能を学ぶ外国人研修生たち。施設には駅ホームなどを備えた実習線もある

保守の現場では「40代は若手」

小雨まじりの真夜中、ある鉄道会社の線路の保守現場を訪ねる機会があった。実際に作業をするのは地元の土木工事会社など協力会社の人たち。人は足りているようだが、「他の地区から援軍を送ってもらってようやくぎりぎり」という。しかも、「40代は若手」と言われるほど高齢化が進んでいる。年配の作業員が辞めた後、新たな人材は採用できるのだろうか。最近、保守作業が原因となる列車トラブルが頻発するが、それも元をたどると人手不足に行き着くかもしれない。

国は2028年度に鉄道分野で不足する1万8400人のうち、国内人材の処遇改善や技術開発で1万4600人を確保できると見込んでおり、残る3800人を上限として特定技能1号外国人を受け入れるという方針を掲げている。もし国内人材の確保が思うように進まなければ、外国人材は3800人では足りなくなる。今回の25人はその試金石となる。

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大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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