文京区立小学校の「3S1K」に中国人が殺到するワケ、彼らは中国に住んでいたときと同じ思考回路で動いている
30年以上前に東京大学に留学したときから文京区に住み続け、孫は3S1Kの一角に通っているという男性も「やはり、保護者たちの会話を聞いているとレベルが高いと感じます。私はたまたま日本での生活のほとんどを文京区内で過ごしましたが、六義園、小石川後楽園など公園も充実していて、生活環境も非常にいい」という。
中国人同士の評判が評判を呼び、昨今は文京区内で不動産を探す人も急増している。在日中国人や、中国から日本に移住する人々に物件を斡旋する不動産会社、Worth Land(ワースランド)代表取締役で上海出身の杉原尋海氏は「最近、とくに移住組から地区指定の問い合わせが増えました」と語る。
「たとえば文京区〇〇の何丁目から何丁目にいい物件はないかという感じで具体的に聞いてきます。明らかにこれらの小学校の学区を意識してのことでしょう。でも、物件自体が足りないので、賃貸でもいい、狭い間取りでもいい、と譲歩する人も……。区内で新築マンションなら80平米くらいで2億円以上はしますが、それでも買いたいという人もいて、そのブランド価値、人気ぶりに驚かされますね」(杉原氏)
教育を目的とする移住は30~40代の働き盛り
近年、政治リスクや景気の悪化、中国社会特有のストレスなどを避け、財産を保全するため、日本移住(潤=ルン)する中国人富裕層が急増しているが、中でも増えている移住の理由が、子どもの教育だ。日本移住する富裕層は20~60代までと幅広いが、教育を目的とする人は30~40代の働き盛りで、学齢期の子どもがいるケースが多い。

比較的リベラルな彼らは習近平思想や愛国主義教育を我が子に受けさせたくないと考え、子どもを日本の公立小学校に入学させたいと思っている。中国側の事情は第2回記事で詳述するが、そうした人々が頻繁に見ているのが、中国のSNS。ウィーチャットのほか、中国版インスタグラムと呼ばれている小紅書(シャオホンシュー、rednote)や、中国版TikTokの抖音(ドウイン douyin)だ。
筆者も小紅書を見てみたが、そこには「東京のどの学区の(公立)小学校がいちばんいいか?」などの一覧表や、「東京23区有名公立小学校ランキング」が多数出回っている。
筆者が見たランキングによると、1位から4位は3S1Kが独占、5位は千代田区立番町小学校、6位は港区立白金小学校だった。
誰が中国のSNSでこのようなランキングを発表したのか、情報の出所は不明だが、おそらく在日中国人の誰かが日本人の受験情報やSNSなどを参考にして制作したものだろう。東京に土地勘がなく、知人も少ない移住者は、これらのSNSを重視し、移住仲介業者(ブローカー)や不動産店の話なども参考にして、東京で住む地区を決めているのだ。
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