わくわくして目覚める生活を、誰にでも! 医学博士 石川善樹×リクナビNEXT編集長 細野真悟
あふれ出る事例に、的確な解説
働く人に必要な健康へのキーワード
細野(リクナビNEXT編集長細野真悟、以下細野)まず最初に、予防医学とは具体的にどんな研究ですか?
石川(医学博士石川善樹、以下石川)予防医学は、健康的な状態を目指す学問です。朝ワクワクして目が覚めて、夜は充実した状態で眠りにつく。その状態をずっとキープするのが目的です。でも現代人はそうではないですよね? 朝、疲れがとれないまま目覚めて、1日のスタートを切っている。その悪循環を正すサポートをするための研究ですね。
そして健康を保つうえで基本中の基本なのが、「衛生」です。これはとても大事なことで、「トイレの後はちゃんと手を洗いましょう」という当たり前のこともそのひとつ。
石鹸でちゃんと手を洗わないと、菌が人に移ります。たとえば、上司が手を洗わずに部下にふれたとします。すると、部下からその子供に何かの菌が移ります。後日、その部下が子供の発熱のために休みをとったとしたら、それは誰のせいだと思いますか?
細野 上司ですよね(笑)。
石川 そうなんです。あらゆる業界のビジネスパーソンと接していて気づいたのですが、要職にあるような偉い人ほど、丁寧に手を洗っているんですよ。ある大企業の元会長は、トイレで爪の先から手首まで洗っていました。なぜそこまでちゃんと手を洗うのかを聞くと、「社会人として当然のマナー。基本的なことをちゃんとしないと、自分にもまわりにも迷惑をかける」というのです。
ゴールドマン・サックス社のトイレには、「ちゃんと手を洗いましょう」と書いてありました。アメリカでは、小学校で咳やくしゃみの仕方を教えます。咳やくしゃみをするときは、手のひらではなく、ひじを曲げて口に近づけ、ひじの裏のくぼみに当てるんです。手でおさえると、それで何かを触ったときに菌が移ってしまうでしょ。本来、手を洗うなどの基本的なことは、子供の頃に習うことですが、大人になるにつれ、疎かにされているように思います。
細野 働く人の健康はパフォーマンスに直結します。効果的な施策ってありますか。
石川 いまだに、オフィスでラジオ体操をしたり、運動会を開催したりする企業がありますよね? そうしたことが、企業と社員にどんなメリットがあるのかを調べてみたところ、「ストレス軽減」「パフォーマンスを上げる」の両面においては、それだけでは影響がないことがわかったんです。
また、意外にも、軽い掃除を習慣化させるのはいい効果があるようです。気軽に取り組めて掃除しながら社員同士のコミュニケーションが生まれることが、仕事のしやすさに寄与するからでしょうか。
細野 昨今、社員のウェルネスにまじめに取り組む企業が増えていますが、その傾向についてどうお考えですか?