欧州の新型車が集結「列車のテストコース」とは? 各国の鉄道技術支えるチェコの巨大な「周回線」

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自国のメーカーなら鉄道会社の協力を得て、本線上で特別に試験走行をさせてもらうこともできるだろうし、不具合があっても工場へ持ち込んですぐに調整することが可能だが、他国のメーカーだとそう簡単にはいかない。試験のための拠点をどこに置くかなど、車両を持ち込んでテストするだけでも大変な作業となる。

その点、ヴェリム試験センターは敷地内にさまざまな試験設備を備えているのはもちろん、不具合の修正を行うための工場もあり、試験走行を実施しながらその場で修正や調整を行うことができる。

欧州の鉄道技術を陰で支える

以前、試験走行中に運悪く強風で倒れた木に激突し、前面を大破した日立レール製の2階建て近郊車両「カラバッジョ」は、破損した前面の交換パーツだけをヴェリムへ運び、その場で交換してすぐにテストを再開した。日立レールの工場があるイタリアまで車両を持ち帰って修復していたら、試験のスケジュールに大きな影響を与えたであろう。ヴェリムの工場設備は、このような大がかりな修理もできる設備を有しているのだ。

日立 カラバッジョ 前面
倒木に激突して破損した日立レール製車両「カラバッジョ」の前面(撮影:橋爪智之)

そして、24時間365日無休であるから、6時間交代で1日4スロットある走行枠を予約すればいつでも試験走行ができる。欧州の主要メーカーが、ここを愛用している理由がおわかりいただけるかと思う。

ヴェリム試験センター 雪 試験
季節や時間、天候を問わず年中無休で試験が行われる(撮影:橋爪智之)
【写真をもう一度見る】新型TGVやパリの2階建て列車、オランダやノルウェーの電車など、欧州の鉄道技術開発を支える「ヴェリム試験センター」でテスト走行する新型車両の数々

近年は、ETCS(欧州標準信号)の試験場としても重宝されている。国によってバラバラだった信号システムを統一化し、直通運転と所要時間の短縮を容易にするETCSは、現在各国の主要路線で導入が進んでいるが、その地上装置・車上装置双方の試験場としても重要性が高まっている。

欧州各国の鉄道メーカーが新型車両や最新技術を開発し、世に送り出すことができるその裏には、ヴェリム試験センターという陰の存在がある。彼らが鉄道メーカーを裏から支えている、と言っても過言ではないのだ。

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橋爪 智之 欧州鉄道フォトライター

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はしづめ ともゆき / Tomoyuki Hashizume

1973年東京都生まれ。日本旅行作家協会 (JTWO)会員。主な寄稿先はダイヤモンド・ビッグ社、鉄道ジャーナル社(連載中)など。現在はチェコ共和国プラハ在住。

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