欧州の新型車が集結「列車のテストコース」とは? 各国の鉄道技術支えるチェコの巨大な「周回線」
20世紀後半から21世紀にかけて、ヨーロッパの鉄道メーカーは大きな転換期を迎えた。大企業が各国の地元企業を買収し、メーカーの統廃合が進んだのだ。ドイツのシーメンスやフランスのアルストムは次々と各国の中小メーカーを取り込み、巨大企業へと成長を果たしたが、そこで新たな問題が浮上してくることになる。
かつての欧州各国の鉄道は、国鉄と地元企業が手を組み、地道な研究開発を行って新型車両を設計してきた。日本でいえばJRと国内メーカーなどが一緒に開発するようなもので、それによって各国の国鉄線内では万全の状態で運行可能な車両を設計・製造することが可能だった。
ところが現在は、メーカーがこれまでの設計データや鉄道会社からの仕様書を基に車両を開発して鉄道会社へ製品を売り込む形に変化した。オーダーメイドではなくレディメイドへと変わったのだ。

とりわけ機関車や近郊型車両に関しては、ベースとなるプラットフォームは同一のレディメイドが一般的となった。自家用車を購入する際に、何色にするか、ナビは付けるか、MTかATのどちらにするか……というのと同じような感覚で、鉄道会社は自社のニーズに合った車両を最適な価格で提供するメーカーと契約を結ぶわけである。
不具合を修正しながら試験できる
しかし、メーカーは欧州各国で運用できる万能車両を設計してはいるが、必ずしも各国の条件に完全にマッチした車両を提供できるかどうかはわからない。
道路と違い、線路には車輪から伝わる衝撃や圧力など、細かい部分で国による違いがある。重量や軸重など、仕様書に記載されたデータ内に収まっているはずなのに、いざ走らせてみたら問題があるということも多い。軌道のみならず信号や架線など、インフラ設備と車両の相性は想像以上に繊細なもので、ここでつまずく車両も多い。欧州で多く発生している納期遅れの主たる要因はここにあると言ってもいい。

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